アンナプルナ・トレッキングに行って分かった7+1のこと

annapurna trekking

2016年4月13日に始まった世界のトレイルを巡る旅は、世界の屋根とも呼ばれるヒマラヤ山脈のアンナプルナ・トレッキングから始まった。ネパールの昔ながらの農村風景から始まり、アンナプルナⅠ峰(8,091m)やアンナプルナサウス(7,219m)、マチャプチャレ(6,993m)を始めとするヒマラヤの高峰を360度の視界で眺めることができるアンナプルナ・ベース・キャンプを目指す10日間のトレッキングだ。

本記事では、実際に行って分かった、アンナプルナ・トレッキングのTipsをお伝えします。

(2016年4月時点の情報です)

目次

その1:気持ちを込めればナマステでだいたい伝わる

アンナプルナのあるネパールの公用語はネパール語。「ナマステ」はこんにちは、こんばんは、さようならなどに使える基本の言葉です。僕らもアンナプルナ・トレッキング中に「ナマステ」と数えきれないぐらい口にしました。

まずトレッキング中の挨拶は「ナマステ」。すれ違う様々な国から来たトレッカーや、他のグループのガイド・ポーターは笑顔でナマステと声をかけてくれます。さらに現地の人たちも、見知らぬ僕らにナマステと挨拶してくれます。家畜の群れを追うおじいさんも、農作業中のおばあさんも、登下校中の子供たちも。

ゲストハウスやレストランでもナマステは使えます。ナマステと言いながら店に入っていくと案内され、店員に声をかけたいときもナマステといえばOK。さようならの意味もあるので、店を去るときもナマステと言って出ていけばよいでしょう。

カトマンズやポカラはもちろん、トレッキング道中の各村のゲストハウスやレストラン、ガイドやポーターは、観光客相手ということもあり英語はだいたい通じます。フレンドリーな人も多く、「どこから来た?」「自分の子供はいま日本に住んでるんだ」というような会話が弾みます。そして最後は笑顔でナマステ。たくさんの人との出会いが歩く力になることでしょう。

子供から大人までどんなときもナマステ!

子供から大人までどんなときもナマステ!

その2:行きも帰りもアップダウンが相当ある

僕らがスタートしたナヤプル(1,050m)と最終目的地アンナプルナ・ベース・キャンプ(4,130m)の標高差は約3,000mですが、その行程は単調な登り坂ではありません。

アンナプルナ・サンクチュアリに入るまでのトレイルはいくつもの山と谷を越えて各集落をつなぐ生活道路であり、だいたい1,500mから3,000mあたりのアップダウンを繰り返しながら、山の奥深くに入っていきます。急登も多く、石の階段を延々と登ったり、隣の山に行くために谷や沢に一度下りてからまた登り返したりするトレイルが続きます。累積標高はかなりのものになります。

下山時も何度か急登があるので、疲労の蓄積してきた身体にはきびしい場面もあります。チョムロンの急登(アンナプルナ・ベース・キャンプに行くときは下り坂、下山時は上り坂)は特に有名。

行程を検討する際は、地図で各集落の標高や等高線を確認し、アップダウンを考慮した無理のない計画を立てたいところです。あらかじめ、どれくらい登らなければならないかを知っておく(覚悟しておく)だけでも、違うものです、笑。なお、歩くにあたって危険な箇所はないですし、一日当たりの歩く距離は柔軟に調整できるので、トレッキング経験が少ない人でも問題ありません。

トレッキング・ポールがあると登り・下りの体への負担が軽減できるので必ず持って行きましょう。(ポカラでレンタルもできます)

annapurna trekking

行きも帰りも石段の上り下りがたくさんあります

その3:夏山と雪山を一気に楽しめる

僕らがアンナプルナを訪れたのは4月下旬でしたが、5日目に宿泊したヒマラヤ(2,873m)あたりまでは夏山の雰囲気でした。朝晩や、夕方雨が降った後は少し寒くなるものの、日中は日差しが強く、汗をたくさんかきます。日焼け対策と水分補給が重要になります。

一方、3,000mを超えるあたりからは、吹いてくる風は登りでもかなり肌寒く感じられ、夕方天気が崩れるときは、雨ではなく大粒の雹や雪になりました。僕らが6日目、7日目に宿泊したマチャプチャレ・ベース・キャンプやアンナプルナ・ベース・キャンプでは、夜はずっと雪が降り、次の日の朝はそれぞれ快晴だったものの、足元は10㎝ぐらい雪が積もっているところもありました。アイゼンはなくても大丈夫でしたが、靴は防水性の高いものがよいでしょう。一面雪景色に日差しが照るので、サングラスは必須。

また朝晩はかなり冷え込むので、防寒着も必要です。保温性の高いウェア、ダウン、レインウェアなど持っているものをすべて着込んで、帽子、手袋、ネックウォーマーなどを着けて寝袋に入っても、しんしんと冷えるという印象です。朝は水道が凍るので水は出ないこともありました。

なお、僕らが訪れたときは、シーズン中ということもあり、マチャプチャレやアンナプルナのベース・キャンプ周辺のトレイルは、早朝から荷上げ・荷下ろしの人たちやトレッカーが行き交っていたので、トレースがないという状況ではありませんでした。

10日間の中で激暑の夏山から激寒の雪山まで一気に楽しめるというのは、アンナプルナをトレッキングする魅力のひとつだと思います。

夏山と雪山の両方を楽しもう

夏山と雪山の両方を楽しもう

その4:アンナプルナ・ベース・キャンプでテントを張っている人がいたら、有名人がアタックしている!?

アンナプルナ・ベース・キャンプは、アンナプルナ・サンクチュアリをトレッキングする一般トレッカーには最終目的地のひとつですが、アンナプルナ登頂を目指す登山家にとっては、ここが文字通りベース・キャンプになります。

8,000m峰は世界に14ありますが、人類が初めて立ったのはアンナプルナⅠ峰。しかし難易度の大変高い山としても有名で、これまで多くの登山家を魅了し、また苦しめてきた山でもあります。

僕らが訪れたときは、アンナプルナ・ベース・キャンプのゲストハウスが並ぶあたりを越えた奥に、いくつかのテントが張ってあり、日本人登山家の栗城史多さんがちょうどアンナプルナ南壁挑戦を前に、ベース・キャンプでアタックのタイミングを待っているところでした。

アンナプルナ・ベース・キャンプから自分の目で見るアンナプルナ南壁は、改めて大きく高くそそり立つようで、ここを自分の力だけで登っていこうという登山家の挑戦のすごさを実感しました。

アンナプルナ・ベース・キャンプのテント、そこにいるのはアタックを目指す有名登山家だった

アンナプルナ・ベース・キャンプのテント、そこにいるのはアタックを目指す有名登山家だった

その5:生地から作るパンの美味しさとマサラティーの癒し

なかなかの累積標高を連日登ることになるアンナプルナ・トレッキングは、やはり食事でのエネルギー補給は重要です。

炭水化物や糖分の摂取には、生地から作っているグルンブレッド、チベタンブレッドなどのパンは美味しくておすすめです。グルンブレッドもチベタンブレッドも、見た目はそれぞれ異なるものの、味は揚げパンのイメージ。小麦粉などを練ったものを油で揚げて、熱々ふっくらモチモチをいただきます。そのままでもほんのり甘く美味しいですが、ジャムやはちみつをつけたり、食卓に置かれている砂糖を少し振りかけたり、エッグ(オムレツ)乗せという食べ方もあります。アンナプルナ・トレッキングに行かれたらぜひ食べていただきたい一品です。

そして、標高が上がると体も冷えてくるので、温かいお茶にもかなりお世話になります。レストランのメニューのホットティーの欄にはいくつか種類がありますが、特におすすめなのはマサラティー。温かいミルクで作った紅茶にショウガやスパイスが少し入ったチャイのイメージ。砂糖を入れて当分補給と心と体を温めるのにぴったりです。その日のゲストハウスにたどり着き、夕食までダイニングでゆっくりするときは、ポットで頼むのも良いです。ホットティーの量は、カップとポットがあり、ポットもスモール、ビッグなど種類があります。ゲストハウスにもよるかもしれませんが、僕らが注文したときはビッグポットのコスパがかなりよく、ふたりで何杯も楽しめました。

grung bread

写真左がグルンブレッド、右はムエスリ(というシリアル)のホットミルクがけです

その6:お腹が空いたときはダルバートを食べる

かなり消耗するアンナプルナ・トレッキング。しっかり食べないと、途中で軽いハンガーノックを感じることもありました。

そんな時はお代わりできるダルバートがおすすめ。食べていると、もっといるかと聞かれるので、遠慮せず食べたい分だけいただきます。さすがに毎食食べていると、アンナプルナを下りてくるときには若干飽きてきたりもしますが、僕らは一日一食は注文していました。

ネパールの定食のようなものだということで、ワンプレートに豆のスープ、おかず、ライスなどが載って出てきます。現地のガイド・ポーターは昼食・夕食はだいたいダルバートを食べているようでした。かなりの量をモリモリ食べています。他のトレッカーのガイドだが、同じ行程で登っていて何度も会うため仲良くなり話をするようになったネパール人のおじさんが、ダルバートのお皿に山盛りになった白いライスを指さして、「これ、アンナプルナ」といってむしゃむしゃ食べたガイドギャグ(?)は、ダイニング全体で大ウケでした。

Dal Bhat

お代わり自由のダルバート、ゲストハウスごとの違いを楽しむのも一つの楽しみ方です

その7:充電チャンスを見逃さない

アンナプルナ・トレッキングの道中の素晴らしい景色は、もちろんまずは五感で感じて心に焼き付けたいですが、思い出として写真や動画に残そうとデジカメや携帯などを持っていくトレッカーも多いです。モバイルバッテリーはあると便利ですが、それでも10日間ともなると容量は厳しく、どこかで充電が必要になってきます。標高が上がり気温が下がってくると、バッテリーの減りが早くなるのも注意したいです。

ネパールは年間を通じて慢性的な電力不足にあり、カトマンズやポカラなどの街でも、トレッキング道中の村々でも、現在毎日計画停電が行われています。ゲストハウスやレストランでは、小さな太陽光発電設備などで自家発電しているところも多く、営業ができないということはありませんが、電気が使えない場面は多くあります。天候や故障によっても急に使えたり使えなくなったりします。

ゲストハウスでは充電を無料(部屋代に込み)でさせてくれるところと、別料金(100~200Nrp)をとるところがあります。コンセントは部屋についている場合と、部屋にはなくダイニングなどにあるコンセントからタコ足配線する場合があります。

いずれにしろ、今日は充電しようと思ったら、電気が来ているかいないかにかかわらず、コンセントにつないで充電できるようにしておくのが良いです。電気はいつ使えていつ使えなくなるかわからないので、あとで寝るときに充電しようと思っていたら、もうその夜は電気が使えないまま終わる、ということもあります。

取材用も兼ねていくつかのカメラを持ち歩いている僕らは、いつどこで電子機器を充電するかは、結構気にしていました。

ちなみに、携帯はGPSで自分の地図上のおおよその位置を知るときにも役に立ちます。オフラインでも使える地図アプリ「Maps.me」は、今回の僕らのトレッキングルートもカバーしていたので、紙の地図とあわせて、トレッキング中、適宜参考にしていました。

綺麗なゲストハウスでも、夜は停電を覚悟しましょう

おまけ:女子および清潔さや快適さをやや求める方へ

山小屋泊で10日間トレッキングするということ、およびネパールを旅行するということ、を想像できていれば、そこまで大きな想定外はなく過ごせると思います。トレッキング中、「ひとりで来ちゃった」と言いながら、軽やかかつ爽やかに、ガイド・ポーターなしで登っていかれた日本人女性にも何人かお会いしました(かっこいい)。

ご参考までに、トレッキングの装備の他に、アンナプルナ・トレッキングに個人的に持って行ってよかったものをまとめておきます。

  • 日焼け対策グッズ各種

    日差しはきつめなので、焼けたくない人は肌の露出は最小限に。つばが広めの帽子、ネックカバー、アームカバー(または長袖ウェア)は個人的に必須です。
    顔は日焼け止めをしっかりと塗り、下りなどで前から日差しを受けるときは、顔まで隠せるネックカバーでガードしていました。

  • トイレットペーパー

    レストランもゲストハウスも、トイレにはトイレットペーパーは置いてないので、自分で持って入ることになります。かさばるので芯を抜き、ゴム紐を通して首からかけられるようにしておくと使いやすいです。濡れたりボロボロになったりするのを防ぐために、チャック付きの袋などに入れておきます。なお、ゲストハウスでトイレットペーパーを買うこともできます(ティッシュペーパーやナプキンも置いているところがありました)。

  • サンダル

    ゲストハウスについてからのリラックス用に、軽くてかさばりにくいサンダルはあると便利です。濡れてもすぐ乾くもののほうが、裸足になるのがためらわれる床のシャワーブースのときも、履いたままシャワーに入れるので良いです。

  • S字フック

    シャワーブースは脱衣所などはなく、物を置く場所もないことが多いです。着替えなど必要なものは手提げ袋やレジ袋に入れ、S字フックでドアなどにひっかけると、濡れたり汚れたりしにくいです。

  • ワンピース(頭から被れるゆったりした一枚で着れる服)

    前述のようにシャワーブースは脱衣所がなく、狭いところで服を脱いだり来たりするのは結構大変です。頭からすっぽり被れるワンピースのような服が一枚あるとスムーズです。標高が高いところは相部屋になることも多いので、部屋で着替えるときなどにも、一度被って中でごそごそするときにも使えます。

  • 水道がないことを想定したグッズ各種

    ゲストハウスによっては、洗面所がなかったり、故障していたり、あまり使い心地がよくなかったりするものもあります。また標高が高くなると、朝は水道が凍って水が出なくなることもあります。手洗い用のアルコール消毒剤や、メイク落としや洗顔用のシートなどはあると便利です。

アンナプルナ・トレッキングで気になることがあればコメント欄に!

アンナプルナ・トレッキングって実際どうなの?と気になることがあれば、コメント欄にメッセージいただければ、今回のトレッキングの実体験をもとに、わかる範囲でお答えします!

 

アンナプルナトレッキングのまとめ記事はこちら

https://trailtravelers.net/annapurna-summary/

世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら

https://trailtravelers.net/worldtravel-route/

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (5件)

  • こんにちは、初めまして^^
    楽しくアンナプルナの記事を拝見いたしました。私も、来年3月下旬頃アンナプルナBCまでのトレッキングを考えています。1人、ガイドポーターなしで行くつもりなのですが(もしポカラの宿で他の女性トレッカーがいればあわよくば一緒に、とも考えています)、不安な点もあるので質問させてくださいm(__)m

    ・寝袋についてですが、日本でモンベルのダウンバガーを購入して持って行こうか、現地で購入またはレンタルしようか悩んでおります。現地では、お手頃価格で売っているお店があると思うのですがネパールのものは、やや重たく大きい、と聞きました。シュラフはなるべく軽量でコンパクトなものが良いので、現地でもモンベルに近いようなタイプのものは購入可能でしょうか?

    ・女性単独トレッカーは山賊に襲われる危険もあると聞きました。トレッキング中は常に他のトレッカーが周りにいましたか?

    回答いただけると幸いです(^^)

    • あやさん、コメントありがとうございます!
      一つ目のご質問の寝袋の現地調達ですが、カトマンズ・ポカラともに品揃え・品質は期待しない方が良いです。大手メーカーのロゴがついていても正規品ではなく、模倣品であることが多いように感じました。軽量コンパクトの高品質のものということであれば、日本での購入が良いかと思います。
      二つ目のご質問の他のトレッカーが周りにいたかについては、通常のルートを歩く限り、それなりにいます。心配であれば、他のトレッカーと付かず離れず歩くこともできると思います。また、山小屋での食事の際に、他のトレッカーと仲良くなることも多いです。毎日だいたい同じ時間に歩き始め、同じ集落まで進むことが多いので、何度も顔を合わせたりします。他のトレッカーのガイドとも仲良くなったりしますよ。(ガイドがは気さくな方が多いです)
      アンナプルナBCは本当に素敵なところなので、ぜひ楽しんできてください!

      • ご丁寧なお返事ありがとうございます(^^) とても参考になるりました!

        恐縮ですが、もう一点質問させてくださいm(__)m 山小屋泊についてですが、ガイドを雇うとガイドが先に行って山小屋を確保してくれるようですが、ガイドなしの場合、(その集落、地点によっても異なると思いますが)、何時頃までに山小屋に到着すれば確実に部屋を取ることができるでしょうか?満室で入れないということもあると聞きまして(・_・;

        • 確実に部屋が確保できる時間はわからないので、僕らの実績をお伝えします。僕らはだいたい16時前後には到着していたため、泊まれないということはありませんでした。途中、チョムロンまでは集落の中にたくさんのゲストハウスがあるので、部屋選びに関して問題はなかったですが、それより先、標高が上がるにつれて、小屋の数が少なくなってくるため、相部屋になることはありました。4人部屋に僕ら2人と他の人とか。また、天気が崩れてくると、それ以上進むのは止めて、宿泊しようと考える人も増えてくるので、部屋が埋まる時間は早まるような気がしました。よろしくお願いします!

          • お返事ありがとうございます。気になっていたことが、実際に行かれた方から聞くことができてとても参考になりました!
            ご丁寧にありがとうございました^^

あや へ返信する コメントをキャンセル

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次