世界一周旅行や海外トレッキングに行く上で気になるのが、万が一に備えて、どのような保険が必要なのかということ。特に海外で登山・トレッキングをするとなると、普通の海外旅行保険で保障内容は十分なのか、クレジットカードに付帯している保険は使えるのか等、気になることがたくさんあると思います。
ここでは、僕らが海外トレッキングをテーマに世界一周した際に、保険について検討・準備したことをまとめます。
海外トレッキングで想定される主なリスク
まずはどんな保険が必要なのかどうかを考える上で、海外トレッキングで想定されるリスクを整理しておきます。海外でトレッキングをするということは、しっかりと準備をし、細心の注意を払っていたとしても、様々なトラブルに見舞われる可能性があり、そして、万が一の時はそれなりの費用が発生するということを頭に入れておく必要があります。
a. 疾病・傷害を負うリスク
どんなに気をつけていても、トレッキングする以上、多少のケガのリスクは常にあります。転倒、滑落や、動物(クマ、ヘビ、ハチ等)に襲われたり、急な天候不順で落雷、凍傷、低体温症等に遭ったりする可能性があります。これに伴い通院治療や手術・入院となった場合、大きな費用が発生します。海外での医療費は国にもよりますが一般的に高額と言われています。
b. 遭難するリスク
道迷いや滑落で遭難する可能性があります。国や地域によってトレイルが不明瞭であったり、歩いている人が極端に少なかったりと、日本の山歩きよりも慎重さが求められます。万が一、遭難した場合、捜索や救助のために多大な費用が発生することになります。
c. 賠償責任を負うリスク
トレッキング中に人にぶつかったり、落石を起こしてしまったりして、他人にケガをさせたり、他人のものを壊してしまうリスクもあります。最悪の場合、他人に対して巨額な損害賠償責任を負ってしまう可能性があります。
d. 携行品が盗難や損害を被るリスク
トレッキングのギアやカメラ等、携行している身の回りのものが、事故により壊れてしまったり、盗まれてしまったりするリスクがあります。海外は日本より盗難リスクが高いです。
e. 航空機が遅延・欠航するリスク
搭乗予定の飛行機が天候不順や機材トラブルによって遅延・欠航する可能性があります。飛行機が遅延・欠航した場合、手配済みの宿泊施設の取消・変更等に新たな費用が発生する可能性があります。なお、山岳エリアを飛ぶ路線は天候の影響を受けやすいことも念頭に入れておきましょう。例えば、ネパールの国内線は天候不順で遅延・欠航しやすいと聞いています。
以上、海外トレッキングをする上で想定しておくべき主なリスクとして、疾病・傷害、遭難、損害賠償、携行品損害、航空機遅延の5つのリスクをあげました。海外でのトレッキングは通常の海外旅行と比較して、これらのリスクが高いと言えるのではないでしょうか。
いずれのリスクについても、保険内容によって保険金が支払われる可能性があるため、しっかりと保険を検討することが大事と言えるでしょう。
保険の選び方
山岳保険か、一般的な海外旅行保険で十分か
登山・トレッキングの内容が「危険な運動・スポーツ」に該当しない場合、一般的な海外旅行保険で上記にあげたリスクに対応していることがほとんどです。
「危険な運動・スポーツ」とは、山に関連するものでは主に、ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山道具を用いる山岳登攀、ロッククライミング、フリークライミング等です。登山・トレッキングの内容がこれらに該当する場合は、いわゆる山岳保険等、危険な運動でも補償する特約のある傷害保険の検討が必要になります。
僕らの場合は「旅行と組み合わせて気軽に楽しむ海外トレッキング」をテーマにしていたので、危険な運動に該当するような本格的な山岳登攀は行わない予定でした。よって海外旅行保険を前提に検討を進めました(以下では海外旅行保険をメインに説明します)。
補償範囲は十分か(多すぎず少なすぎないか)
海外旅行保険といっても様々な保険会社からたくさんの保険商品が出ています。また保険会社だけでなく、保険代理店のホームページ等もあり、情報があふれています。
僕らは、主だったいくつかの保険商品に対して、上述のような主なリスクに対する補償範囲と保険料を比較して、自分たちに合うものを選びました。ちなみに、同じ保険商品であれば、どこから買っても(保険会社から直接でも、どこかの保険代理店を経由しても)補償範囲や保険料は基本的に変わりません。
僕らが特に重視したのは、「治療・救援費用」と「携行品損害」の補償範囲(金額)です。これらは上述の疾病・傷害リスク、遭難リスク、携行品損害リスクをカバーするものです。補償金額の大きい「傷害死亡・後遺障害」に目が行ってしまいますが、僕らとしては「治療・救援費用」と「携行品損害」の方が必要となる可能性が高い(そういうことが起こる可能性が高い)と考え、これらを重視しました。
クレジットカード付帯の海外旅行保険は使えるか
クレジットカードには海外旅行保険が付帯しているものがあります。補償範囲が自分の希望に合っていれば、これを活用する方法もあります。
一般的に、クレジットカード付帯の海外旅行保険の補償範囲は、「傷害死亡・後遺障害」の補償金額が高額(2000万円〜5000万円)に設定されている一方で、「治療・救援費用」が少額(100万円〜200万円)に設定されていることが多いため、これで十分なのかをよく検討する必要があります。
また付帯サービスには自動付帯と利用付帯があるので、加入条件をよく確認しましょう。自動付帯とはクレジットカードに加入すれば自動的に保険を付帯できるタイプ、利用付帯とはそのクレジットカードで当該旅行の全部または一部を支払うことで初めて保険を付帯できるタイプです。利用付帯は、旅行中、公共交通機関(鉄道やバス、タクシー)の支払をカード決済することで利用付帯の条件を満たすことができます。
多くのクレジットカード付帯の海外旅行保険は、一回の海外旅行につき90日間(3ヶ月)が補償の限度となっています。3ヶ月以上の旅行の場合は注意しましょう。
僕らが検討した海外旅行保険
僕らはクレジットカード付帯の保険では「治療・救援費用」の補償金額が少ないと感じたことと、そもそも旅行期間が90日を越えることから、海外旅行保険を契約することとしました。その中でも、まずは最低限の補償が受けられるシンプルな海外旅行保険を10ヶ月間で契約しました。
(参考)僕らが契約した東京海上日動火災保険の海外旅行保険
※本記事執筆時点の情報です。最新の情報は各自ご確認ください。
契約タイプ: N(複数ある契約タイプの中で最低限の補償範囲のもの)
10ヶ月の保険料: 125,210円(最低限の補償内容 = 保険料も安い)
傷害死亡: 500万円
傷害後遺障害: 500万円
治療・救援費用: 1,000万円(クレジットカード付帯の保険より多く十分)
疾病死亡: 500万円
賠償責任: 5,000万円
携行品損害: 10万円(ここだけちょっと少ないと感じた)
航空機寄託手荷物: 10万円
航空機遅延: 2万円
治療や救援の費用に対する補償は僕らとしては十分でしたが、カメラやパソコン等を持ち歩く僕らとしては、携行品の補償範囲はもう少し広げたかったので、クレジットカード付帯の保険も組み合わせて考えました。もともと旅行中の現地での現金調達はクレジットカードのキャッシングを予定していたので、予備も含めて保険が自動付帯のものと利用付帯のものを何枚か用意しました。例えばアフリカや南米等、携行品の盗難リスクが高そうな地域を旅行する期間に合わせて、うまく利用付帯のクレジットカードで保険の補償範囲を広げられるようにしました。
(参考)僕らが入会した海外旅行保険が付帯するクレジットカード
※本記事執筆時点の情報です。最新の情報は各自ご確認ください。
リクルートカード
利用付帯で携行品損害が最大20万円の補償がついています。年会費が無料なので持っておいて損はないだろうと判断し、入会しました。
SBIゴールドカード
利用付帯で携行品損害が最大50万円と高額な補償がついています。また傷害疾病治療が最大500万円とクレジットカードの付帯保険としては高額な補償がついています。年会費が2,500円(税別)かかりますが、補償範囲とのバランスから入会しました。
MUFJカード・プラチナ・アメリカン・エクスプレス
自動付帯で携行品損害が最大50万円と高額な補償がついています。年会費が2万円(税別)かかりますが、家族会員の年会費は無料で、プライオリティ・パス(多くの空港ラウンジが無料で利用できるパス)が本会員も家族会員も無料で発行できます。今回の旅では飛行機も多用するのでプライオリティ・パスはいずれにしろ発行したいと考えていたので、このカードに入会しました。
各クレジットカードの付帯保険のカバー期間は各90日のため、例えば、出発から90日間がMUJFプラチナカード(自動付帯)、91日目〜180日目がリクルートカード(利用付帯)、181日目〜270日目がSBIゴールドカード(利用付帯)でカバーできるよう、タイミングを見て利用付帯のクレジットカードで公共交通機関の支払を行うように計画しました。300日間を完全にはカバーできませんが、基本的には別途契約した海外旅行保険である程度カバーできているため、目をつぶりました。
結局保険にどれだけお世話になったか(僕らの場合)
参考までに、300日の世界のトレイルを巡る旅で、僕らが保険のお世話になった場面をまとめておきます。
まさかの肺炎で一週間入院
トルコの北、コーカサス地方にある旧ソ連のジョージアという国に滞在していた時、夫が急に体調が悪くなり、病院に行ったところ肺炎と診断され一週間の入院になりました。診断までにいろいろな検査をしたりレントゲンを取ったりし、ちょうど病院に行ったのが日曜で急患扱いとなったこともあり、治療費がかさみました。治療費と入院費の他、退院後も一週間ぐらい飲むように言われた薬の費用や、毎日お見舞いに来ていた妻の交通費等も発生しましたが、すべて保険によってカバーされました。治療費・入院費は保険会社が病院と直接やりとりしてくれたため、一時的に費用を立て替えることもありませんでした。
ちなみに、病院探しは外務省の世界の医療事情のホームページを参考にしました。契約した海外旅行保険の冊子にも海外の病院情報は載っていましたが、さすがにジョージアについての情報はなかったので、外務省の情報があって助かりました。病院の先生は片言ながら英語が通じ、何とか意思疎通を図ることが出来ました。
まさかの牛がテントを破壊
ペルーのアンデス山脈で数日間のトレッキングを開始しようとした初日、キャンプ場にテントを設置し荷物を置いてから近くの山までトレッキングに出掛けて戻ってくると、テントがぺしゃんこになり周りにはこの辺りで放し飼いされている牛がたくさん。テントに食料を置き忘れてしまうという初歩的なミスで、テントの骨は折れ、生地は破れ、スリーピングマットもボロボロになってしまいました。トレッキングは取り止め、何とか街に戻る最終のバスに滑り込み、次の日ツーリストポリスに行ってポリスレポートを発行してもらい、保険会社に確認して携行品の補償範囲として対応してもらいました。
日本に帰国後、保険金支払請求をし、無事に保険金を受け取ることができました。保険金請求にはポリスレポート以外に、購入時の金額がわかるものや、損害状況がわかるものが必要になります。被害状況は写真を撮っておくと良いでしょう。
荷物のロスト(未請求)
モントリオール発マイアミ経由でリマに到着した際、預けた荷物が出てきませんでした。調べてもらったところマイアミで荷物の載せ換えができていなかったらしく、翌日になって到着しました。このような場合、必要となった身の回り品(着替え、歯ブラシ、等)の購入費用は保険金が支払われるのですが、購入レシートを破棄してしまったため、請求はしていません。
航空機の遅延(未遂)
300日間でかなりの回数の飛行機を利用した僕ら。やはり航空機の遅延には何度か遭遇しました。いずれの場合も最終的に目的地に到着することができましたが、紙一重だったケースもあって、もしアウトだったら、手配済みの宿泊施設の予約をキャンセルし、再手配する必要があったでしょう。航空機が遅延した場合、航空会社が代替便の手配までは行ってくれますが、追加で発生した宿泊施設の費用等は負担してくれないのがほとんどです。
(参考)世界一周海外トレッキングで発生したハプニングについてまとめは記事はこちら
https://trailtravelers.net/happening/
以上、長い世界一周の行程中、一回ぐらいは食べ物にあたって入院したり、何か身の回りのものを盗まれたり、というハプニングは発生するかなと覚悟はしていましたが、想定外の形で保険にお世話になりました。ハプニング発生中はいろいろ大変でしたが、海外旅行保険によってうまくリスクを低減できて結果オーライということにしたいと思います。
(参考)世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら
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