
世界一周旅行や海外登山・海外トレッキングに行く上で気になるのが、万が一に備えて、どのような保険が必要なのかということ。特に海外で登山・トレッキングをするとなると、普通の海外旅行保険で保障内容は十分なのか、クレジットカードに付帯している保険は使えるのか等、気になることがたくさんあると思います。
ここでは、僕らが2016年に300日間・26カ国以上で海外トレッキングをした際に、保険について検討・準備したことをまとめます。旅行中、実際にジョージアで肺炎入院、ペルーで携行品の損害に遭い、保険を使った経験もあわせて紹介します。
※本記事の保険商品・クレジットカード情報は筆者の旅行当時(2016年)のものです。最新の補償内容・保険料・カードの付帯条件は必ず各社の公式サイトでご確認ください。
海外トレッキングで想定される主なリスク
まずはどんな保険が必要なのかどうかを考える上で、海外トレッキングで想定されるリスクを整理しておきます。海外でトレッキングをするということは、しっかりと準備をし、細心の注意を払っていたとしても、様々なトラブルに見舞われる可能性があり、そして、万が一の時はそれなりの費用が発生するということを頭に入れておく必要があります。
a. 疾病・傷害を負うリスク
どんなに気をつけていても、トレッキングする以上、多少のケガのリスクは常にあります。転倒、滑落や、動物(クマ、ヘビ、ハチ等)に襲われたり、急な天候不順で落雷、凍傷、低体温症等に遭ったりする可能性があります。高所登山では高山病のリスクもあります。これに伴い通院治療や手術・入院となった場合、大きな費用が発生します。海外での医療費は国にもよりますが一般的に高額と言われています。例えば、アメリカで救急搬送+入院した場合、数百万円〜1,000万円以上の請求になることもあります。
b. 遭難するリスク
道迷いや滑落で遭難する可能性があります。国や地域によってトレイルが不明瞭であったり、歩いている人が極端に少なかったりと、日本の山歩きよりも慎重さが求められます。万が一、遭難した場合、捜索や救助のために多大な費用が発生することになります。特にヘリコプターによる救助となった場合の費用は高額であり、ネパールのヘリ救助は1回数十万円〜100万円以上、ヨーロッパアルプスでも同様に高額と言われています。
c. 賠償責任を負うリスク
トレッキング中に人にぶつかったり、落石を起こしてしまったりして、他人にケガをさせたり、他人のものを壊してしまうリスクもあります。最悪の場合、他人に対して巨額な損害賠償責任を負ってしまう可能性があります。
d. 携行品が盗難や損害を被るリスク
トレッキングのギアやカメラ等、携行している身の回りのものが、事故により壊れてしまったり、盗まれてしまったりするリスクがあります。海外は日本より盗難リスクが高いです。
e. 航空機が遅延・欠航するリスク
搭乗予定の飛行機が天候不順や機材トラブルによって遅延・欠航する可能性があります。飛行機が遅延・欠航した場合、手配済みの宿泊施設の取消・変更等に新たな費用が発生する可能性があります。なお、山岳エリアを飛ぶ路線は天候の影響を受けやすいことも念頭に入れておきましょう。例えば、ネパールの国内線は天候不順で遅延・欠航しやすいと聞いています。
以上、海外トレッキングをする上で想定しておくべき主なリスクとして、疾病・傷害、遭難、損害賠償、携行品損害、航空機遅延の5つのリスクをあげました。海外でのトレッキングは通常の海外旅行と比較して、これらのリスクが高いと言えるのではないでしょうか。
いずれのリスクについても、保険内容によって保険金が支払われる可能性があるため、しっかりと保険を検討することが大事と言えるでしょう。

まずは海外トレッキングで想定されるリスクをしっかりと把握しておくことが大事
保険の選び方
山岳保険か、一般的な海外旅行保険で十分か
登山・トレッキングの内容が「危険な運動・スポーツ」に該当しない場合、一般的な海外旅行保険で上記にあげたリスクに対応していることがほとんどです。
「危険な運動・スポーツ」とは、山に関連するものでは主に、ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山道具を用いる山岳登攀、ロッククライミング、フリークライミング等です。登山・トレッキングの内容がこれらに該当する場合は、いわゆる山岳保険等、危険な運動でも補償する特約のある傷害保険の検討が必要になります。
僕らの場合は「旅行と組み合わせて気軽に楽しむ海外トレッキング」をテーマにしていたので、危険な運動に該当するような本格的な山岳登攀は行わない予定でした。よって海外旅行保険を前提に検討を進めました(以下では海外旅行保険をメインに説明します)。

本格的な山岳登攀は行わないのであれば、一般的な海外旅行保険で対応可能
補償範囲は十分か(多すぎず少なすぎないか)
海外旅行保険といっても様々な保険会社からたくさんの保険商品が出ています。また保険会社だけでなく、保険代理店のホームページ等もあり、情報があふれています。
僕らは、主だったいくつかの保険商品に対して、上述のような主なリスクに対する補償範囲と保険料を比較して、自分たちに合うものを選びました。ちなみに、同じ保険商品であれば、どこから買っても(保険会社から直接でも、どこかの保険代理店を経由しても)補償範囲や保険料は基本的に変わりません。
僕らが特に重視したのは、「治療・救援費用」と「携行品損害」の補償範囲(金額)です。これらは上述の疾病・傷害リスク、遭難リスク、携行品損害リスクをカバーするものです。補償金額の大きい「傷害死亡・後遺障害」に目が行ってしまいますが、僕らとしては「治療・救援費用」と「携行品損害」の方が必要となる可能性が高い(そういうことが起こる可能性が高い)と考え、これらを重視しました。
クレジットカード付帯の海外旅行保険は使えるか
クレジットカードには海外旅行保険が付帯しているものがあります。補償範囲が自分の希望に合っていれば、これを活用する方法もあります。
一般的に、クレジットカード付帯の海外旅行保険の補償範囲は、「傷害死亡・後遺障害」の補償金額が高額(2000万円〜5000万円)に設定されている一方で、「治療・救援費用」が少額(100万円〜200万円)に設定されていることが多いため、これで十分なのかをよく検討する必要があります。
また付帯サービスには自動付帯と利用付帯があるので、加入条件をよく確認しましょう。自動付帯とはクレジットカードに加入すれば自動的に保険を付帯できるタイプ、利用付帯とはそのクレジットカードで当該旅行の全部または一部を支払うことで初めて保険を付帯できるタイプです。利用付帯は、旅行中、公共交通機関(鉄道やバス、タクシー)の支払をカード決済することで利用付帯の条件を満たすことができます。
多くのクレジットカード付帯の海外旅行保険は、一回の海外旅行につき90日間(3ヶ月)が補償の限度となっています。3ヶ月以上の旅行の場合は注意しましょう。

クレジットカードの付帯保険を検討する場合は、補償範囲が十分か、利用条件はどうなっているか、期間は十分かを確認
僕らが検討した海外旅行保険
僕らはクレジットカード付帯の保険では「治療・救援費用」の補償金額が少ないと感じたことと、そもそも旅行期間が90日を越えることから、海外旅行保険を契約することとしました。その中でも、まずは最低限の補償が受けられるシンプルな海外旅行保険を10ヶ月間で契約しました。
(参考)僕らが契約した東京海上日動火災保険の海外旅行保険
※本記事執筆時点(2016年)の情報です。現在は商品内容や保険料が変更されている可能性があります。最新情報は東京海上日動の公式サイトでご確認ください。
契約タイプ: N(複数ある契約タイプの中で最低限の補償範囲のもの)
10ヶ月の保険料: 125,210円(最低限の補償内容 = 保険料も安い)
傷害死亡: 500万円
傷害後遺障害: 500万円
治療・救援費用: 1,000万円(クレジットカード付帯の保険より多く十分)
疾病死亡: 500万円
賠償責任: 5,000万円
携行品損害: 10万円(ここだけちょっと少ないと感じた)
航空機寄託手荷物: 10万円
航空機遅延: 2万円
治療や救援の費用に対する補償は僕らとしては十分でしたが、カメラやパソコン等を持ち歩く僕らとしては、携行品の補償範囲はもう少し広げたかったので、クレジットカード付帯の保険も組み合わせて考えました。もともと旅行中の現地での現金調達はクレジットカードのキャッシングを予定していたので、予備も含めて保険が自動付帯のものと利用付帯のものを何枚か用意しました。例えばアフリカや南米等、携行品の盗難リスクが高そうな地域を旅行する期間に合わせて、うまく利用付帯のクレジットカードで保険の補償範囲を広げられるようにしました。
僕らは、自動付帯のカードと利用付帯のカードを複数枚組み合わせて、出発から90日ごとに付帯保険のカバー期間をずらす方法を取りました。例えば、出発〜90日目は自動付帯のカード、91日目〜180日目は利用付帯のカードA(現地で公共交通機関をこのカードで支払い付帯条件を満たす)、181日目〜270日目は利用付帯のカードB、という形です。
クレジットカードの海外旅行保険は、カードの種類や年会費、発行会社によって補償内容や付帯条件が大きく異なり、また年々変更されるため、具体的なカード名の推奨はここでは控えます。選ぶ際のポイントは以下の3点です。
- 「治療・救援費用」の補償額が十分か(100万〜200万円では不安な場合もある)
- 自動付帯か利用付帯か(近年、利用付帯に切り替わったカードが増えている)
- 補償期間は何日間か(多くは90日間)

海外旅行保険をベースとし、クレジットカードの付帯保険で補償範囲を広げました
結局保険にどれだけお世話になったか(僕らの場合)
参考までに、300日の世界のトレイルを巡る旅で、僕らが保険のお世話になった場面をまとめておきます。
まさかの肺炎で一週間入院
トルコの北、コーカサス地方にある旧ソ連のジョージアという国に滞在していた時、夫が急に体調が悪くなり、病院に行ったところ肺炎と診断され一週間の入院になりました。診断までにいろいろな検査をしたりレントゲンを取ったりし、ちょうど病院に行ったのが日曜で急患扱いとなったこともあり、治療費がかさみました。治療費と入院費の他、退院後も一週間ぐらい飲むように言われた薬の費用や、毎日お見舞いに来ていた妻の交通費等も発生しましたが、すべて保険によってカバーされました。治療費・入院費は保険会社が病院と直接やりとりしてくれたため、一時的に費用を立て替えることもありませんでした。
ちなみに、病院探しは外務省の世界の医療事情のホームページを参考にしました。契約した海外旅行保険の冊子にも海外の病院情報は載っていましたが、さすがにジョージアについての情報はなかったので、外務省の情報があって助かりました。病院の先生は片言ながら英語が通じ、何とか意思疎通を図ることが出来ました。
まさかの牛がテントを破壊
ペルーのアンデス山脈で数日間のトレッキングを開始しようとした初日、キャンプ場にテントを設置し荷物を置いてから近くの山までトレッキングに出掛けて戻ってくると、テントがぺしゃんこになり周りにはこの辺りで放し飼いされている牛がたくさん。テントに食料を置き忘れてしまうという初歩的なミスで、テントの骨は折れ、生地は破れ、スリーピングマットもボロボロになってしまいました。トレッキングは取り止め、何とか街に戻る最終のバスに滑り込み、次の日ツーリストポリスに行ってポリスレポートを発行してもらい、保険会社に確認して携行品の補償範囲として対応してもらいました。
日本に帰国後、保険金支払請求をし、無事に保険金を受け取ることができました。保険金請求にはポリスレポート以外に、購入時の金額がわかるものや、損害状況がわかるものが必要になります。被害状況は写真を撮っておくと良いでしょう。
荷物のロスト(未請求)
モントリオール発マイアミ経由でリマに到着した際、預けた荷物が出てきませんでした。調べてもらったところマイアミで荷物の載せ換えができていなかったらしく、翌日になって到着しました。このような場合、必要となった身の回り品(着替え、歯ブラシ、等)の購入費用は保険金が支払われるのですが、購入レシートを破棄してしまったため、請求はしていません。
航空機の遅延(未遂)
300日間でかなりの回数の飛行機を利用した僕ら。やはり航空機の遅延には何度か遭遇しました。いずれの場合も最終的に目的地に到着することができましたが、紙一重だったケースもあって、もしアウトだったら、手配済みの宿泊施設の予約をキャンセルし、再手配する必要があったでしょう。航空機が遅延した場合、航空会社が代替便の手配までは行ってくれますが、追加で発生した宿泊施設の費用等は負担してくれないのがほとんどです。
(参考)世界一周海外トレッキングで発生したハプニングについてまとめは記事はこちら
以上、長い世界一周の行程中、一回ぐらいは食べ物にあたって入院したり、何か身の回りのものを盗まれたり、というハプニングは発生するかなと覚悟はしていましたが、想定外の形で保険にお世話になりました。ハプニング発生中はいろいろ大変でしたが、海外旅行保険によってうまくリスクを低減できて結果オーライということにしたいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外トレッキングの保険料を安く抑えるには?
保険料を抑えるポイントは3つあります。
1つ目は、クレジットカード付帯の海外旅行保険を活用すること。カード年会費の範囲で海外旅行保険が付いてくるので、追加の保険料がかかりません。ただし、補償額(特に治療・救援費用)が十分かどうかは必ず確認してください。
2つ目は、補償範囲を必要最低限に絞ること。僕らも東京海上日動の最低限の契約タイプを選び、不足する携行品損害の部分だけクレジットカード付帯保険で補う形にしました。「傷害死亡・後遺障害」の補償額を高くするより、実際に使う可能性が高い「治療・救援費用」と「携行品損害」を重視して選ぶと、保険料と補償内容のバランスが取りやすいです。
3つ目は、渡航先と旅行日数に応じたプランを選ぶこと。保険料は渡航先や日数で変わるので、必要以上に長い期間で契約しないことも大切です。
ただし、保険料を安くすることばかりに気を取られて補償が不十分になるのは本末転倒です。海外での医療費は想像以上に高額になることがあり、僕らもジョージアでの入院時に保険がなかったらかなりの出費になっていました。安心して旅を楽しむための必要経費として考えることをおすすめします。
Q2. 高山病は海外旅行保険の補償対象になる?
一般的に、旅行中に初めて発症した急性の高山病による治療費は、海外旅行保険の「疾病治療費用」の補償対象になります。ネパールやペルーなど標高の高いエリアでのトレッキングを計画している方にとっては重要なポイントです。
ただし注意点があります。出発前から高山病の診断を受けていたり、治療中の持病がある場合は、補償の対象外となるのが一般的です。持病の急激な悪化をカバーする特約(「疾病に関する応急治療・救援費用補償特約」など)がある保険商品もありますが、標準では付帯されていないことが多いので、心配な方は加入時に確認してください。
また、高所でのトレッキングでは高山病だけでなく、低体温症や凍傷のリスクもあります。「治療・救援費用」の補償額は余裕をもって設定しておくと安心です。僕らの場合は1,000万円の補償を選びましたが、ネパールなどでヘリコプター救助が必要になると1回で数十万円〜100万円以上かかることもあるので、この程度の補償額は決して多すぎるとは言えません。
Q3. 1〜2週間の短期トレッキングでも保険は必要?
必要です。期間が短くてもリスクの大きさは変わりません。むしろ短期間で行動を詰め込む分、疲労や体調不良からケガや病気につながる可能性もあります。
短期の海外トレッキングであれば、クレジットカード付帯の海外旅行保険で対応できる場合が多いです。多くのカード付帯保険は1旅行あたり90日間が補償の上限なので、1〜2週間の旅行なら期間的には十分カバーできます。
確認すべきポイントは、お手持ちのカードの付帯保険が「自動付帯」か「利用付帯」かという点です。近年、多くのクレジットカードが自動付帯から利用付帯に変更しています。利用付帯の場合は、旅行代金や公共交通機関の料金をそのカードで支払わないと保険が適用されませんので、出発前に条件を満たしているか確認しましょう。
カード付帯保険だけでは「治療・救援費用」の補償額が心もとない場合は、1〜2週間程度であれば数千円程度の保険料で海外旅行保険に加入できます。渡航先の医療費水準を考慮して判断してください。
Q4. トレイルランニングは「危険な運動」に該当する?
一般的なトレイルランニング(整備された登山道やトレイルを走る行為)は、多くの海外旅行保険で「危険な運動」には該当しません。ピッケルやアイゼン等の登山用具を使う山岳登攀や、ロッククライミングなどが「危険な運動」の典型例であり、トレイルランニングはこれらとは区別されるのが一般的です。
ただし、保険会社や商品によって「危険な運動」の定義は微妙に異なります。特に、標高の高い山岳地帯でのトレイルランニングや、レース(大会)への参加が補償対象に含まれるかどうかは、事前に保険会社に確認しておくことをおすすめします。海外のトレイルランニングレースに参加する場合は、大会側が参加条件として特定の保険加入を求めているケースもあります。
僕らの場合はトレッキング(歩き)が中心でしたが、トレイルランニングで海外のトレイルを走る方も、保険の選び方の基本的な考え方は同じです。「治療・救援費用」と「携行品損害」を重視し、渡航先のリスクに見合った補償額を確保することが大切です。
Q5.海外トレッキングに予防接種は必要?
渡航先によっては、予防接種が必要または強く推奨される場合があります。保険と同様に、海外トレッキングの準備として忘れずに検討しておきたいポイントです。
特にアフリカや南米の一部の国では、黄熱病の予防接種証明書(イエローカード)がないと入国できない場合があります。また、ネパールやインドなどアジアの山岳地帯でトレッキングをする場合は、A型肝炎、破傷風、狂犬病などの予防接種が推奨されています。トレッキングでは野生動物との遭遇や、衛生環境が整っていない地域での食事・宿泊も想定されるため、一般的な海外旅行以上に予防接種の重要性は高いと言えます。
予防接種の中には複数回の接種が必要なものもあり、すべて完了するまでに1〜2ヶ月かかることもあります。出発が決まったらできるだけ早めにトラベルクリニック等で相談することをおすすめします。
僕らが世界一周海外トレッキングの際に実際に接種した予防接種の種類やスケジュール、費用については、こちらの記事で詳しくまとめています。

予想外のハプニングも海外旅行保険のおかけで大きな費用負担なく旅を続けることができました
(参考)世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら





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