
本記事では、ドゥルミトル国立公園のトレッキングレポートをお伝えします。
(トレッキング実施日:2016年6月29日)
目次
拠点となる町ジャブリャクへ
ドゥルミトル国立公園Durmitor National Parkは、モンテネグロの北部にあり、ジャブリャクZabljakという町が拠点となる。
ジャブリャクは標高1,456mに位置し、高原のスキーリゾートといった感じで、なだらかな丘に日本でいうところのペンションが点在するような美しい街だ。モンテネグロの大きさは長野県と同程度とのことで、町の雰囲気も長野の菅平や志賀高原を感じさせた。
町のインフォメーションで情報を仕入れ、今回はLedena Pecinaと呼ばれるアイスケイブ(氷柱のある洞穴)があるObla Glavaという山までトレッキングすることを決めた。この辺りの最高峰ボボトブクックBobotov Kuk(2,522m)はまだ雪が残りやや危険なこと、ジャブリャクから日帰りで登るには行程が長く僕らには少しハードであることから、今回は見送った。

ジャブリャクの街

ペンションのような可愛らしい建物が並ぶ
ひんやりとした空気にしっとりとした土
久々の山らしい山にテンションがあがる僕ら。ここを訪れる前に歩いたトルコやギリシャでの海沿いトレッキングや渓谷トレッキングも特徴的なもので楽しかったが、やっぱり山を登ることが好きなのかもしれない。
国立公園の入り口で入山料3ユーロを払い登り始める。
ひんやりとした空気にしっとりとした土は、トルコやギリシャで歩いてきた乾燥したトレイルと違い、日本の山に似ている気がした。

気分良く美しい森に入っていく

前日は雨だったため、しっとりとしたトレイルだ
秋吉台のような山肌に
樹林帯を抜けると、緑の草原に石灰岩の白い岩肌が顔をだす秋吉台のような風景となってくる。登山口からここまで1時間半程度、登山口の標高が高いこともあって樹林帯を抜けるまでの時間・距離が短いのもドゥルミトルの特徴かもしれない。

登山口からわずか1時間半程度で樹林帯を抜ける

石灰岩の白い岩肌が露出したトレイルは秋吉台のよう
美しいカールと2,000m級の山々
そんな気持ち良いトレイルをしばらく歩き続け、小さな峠のようなポイントを抜けると、美しいカール地形が見えて来る。カールを囲むように2,000m級の山々がそびえ立っている。
ここまで登山口から2時間半。これくらいの登山でこのような美しい景色に出会えるのはなかなか嬉しいもの。ここからしばらくは遠くには連なる山々、足元にはたくさんのお花を眺めながら、緩やかな丘を歩いていく。

この先に待っていたのは・・・

遠くに美しいカール地形

このあたりのトレイルは本当に気持ち良かった
北アルプスの涸沢のような場所に
途中、小屋(避難小屋のようなものや、営業はしていなかったがBEERという看板が出てきる小屋など)があり、テントも設営可能と思われる場所に到着する。眺望が素晴らしく、ここでキャンプをすると、夕焼けから星空、そして朝焼けまできっと脳裏に焼付く景色が見られるのだと思う。北アルプスでいう涸沢を小さくしたような場所だ。
この場所は、最高峰ボボトゥブクックへの登頂や、その先まで縦走する場合はちょうど良い野営場所になると思われる。なお、近くに水場があるかどうかは確認できなかった。

小屋とテント場らしき場所があるポイントに

ここからはカール全体が見渡せる
カールの斜面をトラバース
ここからはカールの斜面に沿ってトレイルが続き、徐々にガレ場の急登に変わっていく。引き続き眺望は素晴らしい。カールの底の部分には小さなカール湖が見られる。

カールの斜面をトラバースしていく

カールの底には小さなカール湖が見られる
キツイ登りは羊たちとともに
ちょうど羊の群れもこのトレイルを登っていて、可愛らしい羊たちの表情と高低様々な鳴き声のお陰で、キツイはずの登りも、写真を撮りながら楽しく登ることができた。

結構な斜面を羊の群れが登っていく

羊の群れに混ざりながら登っていく
大きな岩の塊を乗り越え目的地へ
ここまで来ると目的地まであとちょっと。ここからは大きな岩の塊をいくつも越えていくようなトレイルになる。左手には引き続き連なる美しい山々、右手にはこれまでカールに遮られ、見えなかったドゥルミトル北部の山群が見え、右手後方には遠くジャブリャクの町が見下ろせるようになる。

正面に見えるのが今日の目的地Obla Glavaだ
僕らだけの絶景ポイント
ようやく、アイスケイブらしき洞穴が見えてきた。アイスケイブの中に入る前に、眺望の良いところを見つけ、ランチタイム。
頂上ではないが、ボボトゥブクックをはじめドゥルミトルの山々がぐるりと見渡せる僕らだけの絶景ポイントだ。必ずしも頂上を目指さないのが僕ららしいなと思いながら、手作りサンドウィッチを頂く。(アイスケイブがあるObla Glavaという山の頂上へは、明確なトレイルがなく、岩登りが必要と思われたため、登らなかった。)
あまりの気持ち良さに2時間弱もここでゆっくりしてしまった。これからアイスケイブを覗いて下山。

僕らだけの場所を見つけランチタイム

奥に見えるのが最高峰ボボトヴクックだ
神秘的なアイスケイブ
アイスケイブは洞穴の中に、いくつもの氷柱が見られる場所で、ドゥルミトル国立公園トレッキングの見所の一つだ。入り口に近づいてみると、大きな雪渓が手前から奥にかけて残っていたため、中には入らず入り口から奥を覗くだけにとどめた。それでもたくさんの氷柱が見え、その神秘的な雰囲気を十分に味わうことができた。

洞穴の入り口に大きな雪渓が

中を覗くと氷柱が見えた
雰囲気の異なる下山ルートを通り最後は黒い湖へ
下山は、途中まで登りと異なるルートを通る。遠くにジャブリャクの町を見下ろし、ゴツゴツとした岩を越えていく。
ゴールは国立公園入り口近くにある、黒い湖Black Lakeと呼ばれるツルノ・イェゼロCrno Jezero。ちょうど夕陽が差し込み、湖面が美しいエメラルドグリーンに輝いていた。
久々の登山を十二分に満喫した僕らだった。

遠くにはジャブリャクの街

たくさんの岩を乗り越えるタフなルートだった

ゴールは黒い湖と呼ばれるツルノ・イェゼロ
歩き終えて
この世界のトレイルを巡る旅を計画した時点では、ドゥルミトル国立公園のトレッキングは予定していなかった。ギリシャからはバルカン半島を陸路で北上することを決めた際に、ルート上にある各国のトレイルの情報を収集し、世界自然遺産であるにも関わらず、まだまだ情報が少ないこのような場所があることを知り、是非歩いてみたいと思ったのがきっかけだ。
槍ヶ岳やモンブランのような分かりやすい特徴的な山はないが、石灰岩の白い岩肌のトレイルは印象的で、日帰りトレッキングでこのような雄大な景色を楽しめてしまうのがドゥルミトル国立公園の魅力なのだろう。
今回僕らが歩いたのはドゥルミトル国立公園のごく一部。もっともっと歩きたい気持ちを抑え、次の目的地アドリア海沿岸の街コトルを目指した。
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