ジョンミューアトレイルを歩いた僕らは再び大西洋を渡り、ヨーロッパの地に戻って来た。強い日差しにのんびりとした雰囲気、干し鱈の香りが印象的な南欧ポルトガル。トレッキングコース選びに苦労したが、雰囲気の良い二つのトレイルを巡ることができた。
二つ目は、ユーラシア大陸最西端のロカ岬に向け、大西洋を眺めながら断崖絶壁と白い砂浜が美しい海岸沿いのトレイルを歩いた。
(トレッキング実施日:2016年9月22日)
概要
- スタート地点 アゼーニャス・ド・マール Azenhas do Mar
- ゴール地点 ロカ岬 Cabo da Roca
- 11時30分出発 17時00分到着
- 行動時間 約5時間30分(休憩込み)
- 距離 約11km
歴史ある街リスボンへ
ロウザン・シスト・トレイルを歩いた僕らはポルトガルの首都リスボンへ向かった。その歴史はロンドンやパリ、ローマなどよりも長く、紀元前1200年頃から人が住んでいたと言われる。15世紀の大航海時代には、バスコ・ダ・ガマを始めとする多くのポルトガルの遠征隊がリスボンから旅立って行った。
坂が多い町で、石畳に引かれたレールの上をレトロな黄色い路面電車が坂道を駆け上がり、右へ左へ曲がっていく。ベーカリーからは甘いカスタードの香りが漂う。ポルトガル名物のエッグタルトが所狭しと並んでいた。

リスボンは坂の街。レトロな路面電車が絵になる

僕らはエッグタルトの有名店パステイス・デ・ベレンで購入。生地はサクサク、中はフワトロで最高に美味しい
ヨーロピアン・ロングディスタンス・パス
リスボンから西に約30キロ行くと、ユーラシア大陸最西端のロカ岬がある。リスボンから日帰りで訪れることができる観光地として人気が高い場所だが、僕らはここをトレッキングの舞台に選んだ。極東日本を出発して、アジアを歩き、ヨーロッパを歩いてきた僕ら。この大きなユーラシア大陸の端は、やはり歩いてたどり着きたい。そう考えたのだ。
ユーラシア大陸の大西洋岸には、E9というヨーロピアン・ロングディスタンス・パスが、北はエストニアから南はポルトガルまで約5,000キロにわたって伸びている。今回はごく僅かだが、この果てしないロングトレイルの一部区間を歩き、ロカ岬に向かうことにした。
断崖に家が並ぶ美しい場所
スタート地点は、ロカ岬から海岸線に沿って北に10キロほどの位置にあるアゼーニャス・ド・マール。リスボンから1時間ほど。電車でシントラまで行き、そこからバスに乗り継いで行く。小さな砂浜のビーチとその奥の切り立った断崖に家が並ぶ美しい場所。大西洋から吹く海風によってできた高波が岸壁にぶつかってしぶきがあがり、それが風に乗って舞い上がることで、美しい街並みに白いベールをかけていた。

アゼーニャス・ド・マール。断崖に並ぶ家々が印象的な場所。波しぶきで白いベールがかかっていた。夕暮れ時にも訪れてみたい場所だった
大西洋を感じるマリンブルートレイル
ロカ岬へ向かって断崖沿いの道を歩き始める。右手にはマリンブルーの大西洋がどこまでも広がり、足元には黄色や白の花が咲いている。その先の断崖沿いでは、激しく波打つ海に向かって釣りをしている人もいる。そこから見える波の高さ、力強さは地中海のそれとは大きく異なり、先に広がる外洋の大きさを実感した。

南アフリカ原産の常緑多年草カルポブローツス・エドゥリス。白や黄色の花がマリンブルーのトレイルを鮮やかに彩っていた

切り立った断崖沿いを進んでいく。大西洋のエネルギーを感じられる場所だ

地元の人だろうか。海釣りをしている人を見かけた
波の音だけが繰り返す静かなビーチ
さらに進むとやがて広い砂浜に降り立つ。9月中旬のこの時期はもうオフシーズンなのか泳いでいる人はほとんどおらず、引いては寄せる波際を犬と戯れたりする人がいる。トレッキングには水着で華やかなビーチよりも、波の音だけが繰り返すこのような雰囲気が合う。

オフシーズンの静かなビーチ。波の音だけが繰り返す
絵になる風景がどこまでも続く
その後も、断崖とビーチを繰り返す。人はまばらで、どこを切り取っても絵になる風景が続く。歩いては立ち止まり、何度もシャッターを切った。印象的な風景に合わせ潮の香りもどことなく爽やかに感じた。
プライア・グランデ(Praia Grande)とプライア・ダ・アドラガ(Praia da Adraga)という二つのビーチの間にある岸壁の垂直に近い地層には恐竜の足跡が残っていた。貴重な化石群なのだが、象の足跡のような丸みのある単純な形が可愛らしかった。

細長いビーチはプライア・グランデ。奥から手前方向に歩いてきて振り返った風景

左に見える大きな岩に恐竜の足跡の化石があった。階段が整備されており、ここからビーチまで降りることもできる

このような崖の上のトレイルを歩いていく。どこも見晴らしが良く気持ちよい
隠れ家ビーチ
ロカ岬に最も近いビーチがプライア・ダ・ウルサ(Praia da Ursa)。ここは高さ100メートルほどの断崖の下にある隠れ家のようなビーチ。特徴的な岩山が迫り出した風光明媚な景観。ロカ岬方面から歩いて来ている人もいるようだった(ロカ岬から片道2キロ弱の距離だが、断崖の上からビーチまで降りるには足場の悪いトレイルが続くので、注意が必要)。
プライア・ダ・ウルサを越えると、灯台が迫ってくる。どうやらあの辺りがロカ岬だろう。

プライア・ダ・ウルサ。高さ100メートルほどの断崖に囲まれた秘境ビーチ

プライア・ダ・ウルサ。特徴的な岩山がある風光明媚な場所

やがてロカ岬の近くに立つ灯台が見えてくる
ユーラシア大陸最西端へ
大西洋側に傾き始めた太陽が断崖の上に広がる草花をオレンジ色に照らす。1日の終わりとともに、いよいよユーラシア大陸の終わりが近づいてきた。
間もなく目印にしていた灯台に到着。ロカ岬はそこから少しだけ先だった。
バスで訪れるたくさんの観光客に混ざり、ここがロカ岬であることを示すモニュメントの前に立つ。この大きな大陸の端に歩いてたどり着いた瞬間だった。
モミュメントには、ポルトガルの詩人カモンイスが詠んだ「ここに地終わり、海始まる」という一節が刻まれている。強い潮風に吹かれながら、しばらくその場でこれまで歩いてきたユーラシア大陸のトレイルを思い浮かべていた。
大陸の果てでしばらく過ごした僕らはバスでカスカイスへ移動。そこから列車でリスボンまで戻る。車窓から眺める夕暮れの景色がとても綺麗だった。

日が傾き始めた頃、ロカ岬へ到着。バスや車で訪れたたくさんの観光客で賑わっていた

ロカ岬に立つモミュメント。ここがユーラシア大陸の最西端
歩き終えて
ユーラシア大陸最西端のロカ岬は、ポルトガルの首都リスボンからもアクセスが良く、たくさんの観光客がリスボンから日帰りで訪れる場所。僕らは僕ららしく、ここを歩いて訪れてみたかった。調べてみると、このあたりは断崖と砂浜が繰り返し現れる面白そうな場所だった。
実際に自分の足で歩いたことで、大西洋から吹く風と力強い波を感じ、いくつもの美しい岸壁とビーチを見ることができた。大陸の端がどのような場所なのかを体で感じることができた。
「ここに地終わり、海始まる」
歩いて訪れた分、それを強く感じることができたかもしれない。
ハイライトと改善点
<ハイライト>
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たどり着いたロカ岬と大西洋に沈む太陽
時間をかけて歩いてたどり着いたロカ岬。傾き始めた太陽があたりの草原を照らし、いよいよユーラシア大陸最西端だという僕らの気持ちを盛り上げた。柔らかな光と優しい潮風が僕らを包み、心地よい疲労感と、ついに大陸の果てに来たんだ!という達成感を感じた瞬間だった
<改善点>
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シントラと名の付く駅は複数あり、きちんと確認すること
アゼーニャス・ド・マールへのバスが出るのは、シントラ観光の拠点となるシントラ駅ではなく、そのひとつ手前のポルテラ・デ・シントラ駅だった。バス停を見つけられず本数の少ないバスを1本逃すことに。バスの時刻表にもポルテラ・デ・シントラと書いてあったが、シントラ駅のことと勝手に思ってしまっていた・・・
ロカ岬トレイルのルート、アクセス、宿泊等のまとめ記事はこちら
https://trailtravelers.net/portugal-cabo-da-roca-summary/
世界のトレイルを巡る旅の概要はこちら
https://trailtravelers.net/worldtravel-route/
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