自由と自律を楽しむ ジョンミューアトレイル①

JMT7月から8月にかけてヨーロッパ各地のトレイルを歩き周った僕らは、大西洋を渡りアメリカ・カリフォルニアへやってきた。ヨセミテ国立公園などがあるシエラネバダ山脈には数多くの美しいトレイルがあり、その中でも人気が高いのがジョンミューアトレイル(JMT)だ。北はヨセミテバレーから南はアメリカ本土最高峰のマウントホイットニーまで続く全行程210.6マイル(337キロメートル)。今回僕らはその内の3分の1程度を7日間かけて歩いた。

本記事ではトレッキング初日・二日目のレポートをお伝えします。

(トレッキング実施日:2016年9月4日、5日)

目次

プロローグ

僕らはようやくホースシューレイクそばにある登山口にたどりつくことができた。

この場所に来るまでに本当にいろんなことがありすぎて、一時はもう歩くのをやめようかと思うほどだった。

サンフランシスコからヨセミテバレーを経由して、僕らのJMTのスタート地点となるマンモスレイクスの街へ移動する予定としていたのだが、ヨセミテバレーからマンモスレイクスへ移動するバスが無く、急遽100キロ先まで人生初のヒッチハイクすることになったり(乗ろうとしていたバスは8月までは毎日運行していたが、9月からは週末のみの運行に切り替わっていた)、マンモスレイクスの街についてからはどのキャンプサイトも空きが無く野宿するかという状況に陥ったり(トレッキング開始前日がアメリカの連休と重なりどこも予約でいっぱいだった)と、とにかく大変な状況だった、苦笑。

旅を続けながら、トレッキングレポートを作成し、次のトレイルを歩くための準備をしているが、7月以降ヨーロッパ各地のトレイルを歩き続けてきたしわ寄せがここで一気に来たようだった。

マンモスレイクスの街の入り口。ヨセミテバレーから急遽人生初のヒッチハイクを決行し、なんとか100キロ先のこの街まで来ることができた

マンモスレイクスの街の入り口。ヨセミテバレーから急遽人生初のヒッチハイクを敢行し、なんとか100キロ先のこの街まで来ることができた

Day 1 概要 ホースシューレイク〜レッズメドウ

  • スタート地点: ホースシューレイク Horseshoe Lake
  • ゴール地点: レッズメドウ Reds Meadow
  • 12時10分出発 16時40分到着
  • 行動時間: 4時間30分(休憩込み)
  • 距離: 約7.1マイル(約11.4キロ)

秋の気配を見せるホースシューレイク

スタート地点に立つことができた僕らは、胸を撫で下ろし、いつも通りスタートの記念撮影を行った。この辺りはもう秋の気配。吹く風が冷たく、夏を越したホースシューレイクの湖水はだいぶ少なくなっていた。

JMTをセクションハイクする僕らは、マンモスレイクスのホースシューレイク近くの登山口から歩き始めてJMTルートに合流し、そこからヨセミテバレーのハッピーアイルまでを歩く。総行程は約67.3マイル(約107.7キロ)で、JMT全行程210.6マイル(337キロ)のうちの1/3程度を歩くことになる。

今日はJMTルートに合流した後、レッズメドウまで歩き、キャンプサイトに宿泊する予定だ。約7.1マイル(約11.4キロ)の行程となる。

ホースシューレイクの周りは立ち枯れた木が特徴的。案内板によるとこの辺りは地中の二酸化炭素濃度が高いらしく、木が枯れてしまうのだとか。そんな景色の中を抜けて山に入っていく。ザクザクとした砂地のトレイルだ。交換した新しいトレッキングシューズを汚したくなくて、いつもより少しだけ慎重に歩く。

ホースシューレイク。時期的な理由からかだいぶ湖水が少なくなっていたが、とても美しい湖だった

ホースシューレイク。この時期はだいぶ湖水が少なくなっていたが、とても美しい湖だった

ホースシューレイク付近は立ち枯れた木が特徴的だった。ここが登山口でここから山に入っていく

ホースシューレイク付近は立ち枯れた木が特徴的だった。ここが登山口でここから山に入っていく

交換した新しいシューズ。今回もTHE North Faceのヘッジホッグファストパック!

交換した新しいシューズ。今回もTHE North Faceのヘッジホッグファストパック!

来て良かったなと思えた瞬間

しばらく歩くとコバルトブルーに輝く湖が見えてきた。マクレオドレイクだ。そばまで近づくと透き通った水が太陽に照らされて輝き、背後にある深緑の針葉樹林と、グレーの岩山、雲ひとつない青い空のバランスが素晴らしく、この景色を見れただけで、JMTに来て良かったなと思えた瞬間だった。

空に向かってまっすぐに伸びる針葉樹林の中を進んで行く。ほどなくしてトレイルは下りに変わる。今日の目的地レッズメドウまではこの先ずっと下りとなる。

針葉樹林の森を抜けていくとキラキラと輝く湖が見えてくる

針葉樹林の森を抜けていくとキラキラと輝く湖が見えてくる

とても透明度が高い。この景色を見て一気に気分が盛り上がった、笑

とても透明度が高い。背後の山と森とのバランスを含め、この景色を見て一気に気分が盛り上がった!

JMTルートへ合流

砂地のトレイルをザクザク言わせながらリズムよく進んで行くと、茶色の土が露出した三角の山レッドコーンズが見えてきた。あのあたりで、JMTルートに合流することになる。

合流地点は、小川が流れ、キャンプの適地にもなっている場所で、女性のソロトレッカーが休憩をしていた。僕らもJMTルートへの合流を祝い、ここで手作りベーグルサンドのランチ休憩をとった。アメリカではスーパーで気軽にベーグルが手に入るのが嬉しい。

気持ち良い針葉樹林の森を下っていくと隙間から赤茶色の三角の山レッドコーンズが見えてくる

気持ち良い針葉樹林の森を下っていくと、隙間から赤茶色の三角の山レッドコーンズが見えてくる

僕らのJMT合流地点。川に橋がかかっており、手前が広い休憩スペース

僕らのJMT合流地点。川に橋がかかっており、手前が広い休憩スペース

森の力強い生命を感じる場所

ここから先、少し急な下りを抜けると、黒く焼け焦げた幹だけが林立するエリアとなる。ここは1992年に落雷によって山火事が発生し、多くの森が消失した場所。それから24年が経過した現在は、足元にはたくさんの低木が生い茂り、森の再生が始まっていた。その姿は美しく、森の力強い生命を感じる場所だった。

かなりの広い範囲でこのような焼け焦げた森が広がる

かなりの広い範囲でこのような焼け焦げた森が広がる

確かにカリフォルニアといえば山火事のイメージもある。足元には低木が育ち始め森の再生が始まっていた

確かにカリフォルニアといえば山火事のイメージもある。足元には低木が育ち始め森の再生が始まっていた

本日のキャンプ地レッズメドウ

この場所を超えると今日の目的地レッズメドウ。ここは売店やレストラン、シャワー施設などもあるJMTルート上でも数少ない補給場所のひとつ。マンモスレイクスからバスで1時間ほどでアクセス可能でもあり、たくさんのレジャー客で賑わっていた。

実はレッズメドウは、昨晩宿泊し、今朝出発した場所でもある。マンモスレイク周辺のキャンプサイトで空きを見つけられなかった僕らは、ビジターセンターでこのバックパッカーズキャンプサイトを紹介してもらった。バックパッカーズキャンプは、パーミットを取得した期間中及びその前後で予約なしで利用出来るキャンプサイトだ。

昨晩はここに泊まり、今朝改めてマンモスレイクの街に戻り、ホースシューレイクそばの登山口からトレッキングを開始したのだ。バックパッカーズキャンプは連泊が禁止されているのだが、昨晩はトレッキング開始前の宿泊で、今日はトレッキング中の宿泊。連泊ではあるが、一度撤去しているし、ルール上は問題ないはず。

売店やシャワー施設と、キャンプサイトは少し離れており、先にシャワーを浴びてから、キャンプサイトへ向かった。日が暮れる前に夕食を作り、初日を無事に歩けたことを祝った。ようやく一安心できた僕らは、辺りを暗闇が支配すると同時に瞼を閉じた。

この林の向こうがレッズメドウだ。今日は下り中心だったため余裕を持って到着できた

この林の向こうがレッズメドウだ。今日は下り中心だったため余裕を持って到着できた

レッズメドウのシャワー施設(コイン式)。ランドリー設備もあり、ここまで長期間歩いてきたハイカーにとってはありがたい場所だろう

レッズメドウのシャワー施設(コイン式)。ランドリー設備もあり、ここまで長期間歩いてきたハイカーにとってはありがたい場所だろう

レッズメドウのバックパッカーズキャンプサイト。ウォークインキャンプとも言う

レッズメドウのバックパッカーズキャンプサイト。ウォークインキャンプサイトとも言う。狭いスペースにテントが密集する

Day 2 概要 レッズメドウ〜ロザリーレイク

  • スタート地点: レッズメドウ Reds Meadow
  • ゴール地点: ロザリーレイク Rosalie Lake
  • 9時25分出発 16時30分到着
  • 行動時間: 7時間5分(休憩込み)
  • 距離: 約8.5マイル(約13.6キロ)

どこまで歩くかは自由

今日はロザリーレイクまでの約8.5マイル(約13.6キロ)を歩く予定だ。

ジョンミューアトレイルは売店やキャンプサイトのある場所はごく一部で、キャンプ適地を見つけて野営するスタイル。パーミット申請時に大まかな日程を提出するものの、日々歩きたいだけ歩き、気に入った場所でキャンプを張る。そんなトレッキングを何日間も続けることが可能なのだ。

一方で、決まりきった行程がない分、自分たちがどれくらい歩けるのか、どのあたりにキャンプするのが良いのかなどがわからず、直前まで予定が決まらなかったのも事実。

とりあえず、ヨセミテバレーまでの総距離を単純に日割りして、1日あたりのおおよその距離を決め、地図に示されているキャンプ適地マークを参考に目的地を決めた。ロザリーレイクもそうして決まった二日目の目的地だ。

レッズメドウを出発してすぐ、デビルズポストパイルという溶岩が固まってできた石柱が林立する景勝地にたどり着く。森の中に突如現れる火山活動の形跡に驚く。ここを経由してから、JMTルートに合流。

デビルズポストパイル。大きな六角柱がずらりと並ぶ姿は圧巻。思わず僕らも柱になってみる、笑

デビルズポストパイル。大きな六角柱がずらりと並ぶ姿は圧巻。思わず僕らも柱になってみる、笑

砂地の針葉樹林トレイルを緩やかに登っていく

今日は緩やかな登りが続く。昨日に引き続き、砂地に針葉樹林が茂るトレイルを進んで行く。ジョンストンメドウを越え、トリニティレイクスを越えて行く。そして峠のような場所で少しだけトレイルを右にそれてみると、マンモスレイクス方面マンモスマウンテンの景色を見渡すことができる眺望ポイントだった。

JMTのトレイルはほとんどが砂地。登りは足を取られるので歩きにくい

JMTのトレイルはほとんどが砂地。登りは足を取られるので歩きにくい

時折、森の中に草原が広がっており、のどかな雰囲気を楽しみながら歩くことができた

時折、森の中に草原や湿地が広がっており、のどかな雰囲気を楽しみながら歩くことができた

トレイルを少しだけ外れて眺望がある場所へ。遠くに見えるのはマンモスレイクスのマンモスマウンテンだ!

トレイルを少しだけ外れて眺望がある場所へ。遠くに見えるのはマンモスレイクスのマンモスマウンテンだ!

給水、そしてキャンプ地探し

グラディズレイクで給水をし、16時半過ぎ、今日の目的地としていたロザリーレイクに到着。昨日はキャンプサイトだったが、今日はいよいよワイルドキャンプ。キャンプに適した場所を自分たちで探す必要がある。

JMTは、一部の禁止区域を除き、一定のルール(トレイルや水場から100フィート(約30メートル)以上離れること等)のもと、どこにキャンプを張っても良いのだ。どこでも良いとは言え、これまで多くの人が歩きキャンプをしてきているため、地図上にもキャンプに適した場所の有無が参考までに示されている。ロザリーレイクの周辺はキャンプ適地であり、トレイルを外れて森の中に入ると、いくつかのファイヤーサークル(焚き火の跡)を確認することができた。

グラディズレイクで給水。JMTの水はそのままでは飲めないので浄水。ソーヤーミニを使用している人が多かった

グラディズレイクで給水。JMTの水はそのままでは飲めないので浄水する。浄水器はソーヤーミニを使用している人が多かった

本日の目的地ロザリーレイク。森に囲まれた静かな湖畔が印象的だった

本日の目的地ロザリーレイク。森に囲まれた静かな湖畔が印象的だった

トレイルを外れて森に入ると、このようなファイアサークルをいくつも見つけることができた。僕らは木々の隙間から湖を眺めることができるこの場所に決定!

トレイルを外れて森に入ると、このようなファイヤーサークルをいくつも見つけることができた。今日のキャンプは木々の隙間から湖を眺めることができるこの場所に決定!

焚き火にあたり満天の星空を望む

暗くなる前に、焚き火用の枯れ枝を集め、夕食の準備。

これまでのトレイルでは、クングスレーデンでも焚き火が可能だったが、雨が多く枯れ枝が湿っていたため、焚き火をすることはなかった。JMTが初めての焚き火。

日が暮れると急激に冷え込むため、焚き火ができることがありがたかった。火にあたりながら、ゆっくりと夕食を済ませ、食後は一杯のコーヒー。

頭上にはこの旅一番の満天の星空が広がっていた。

焚き火を囲みながら夕食をとる。なんだかほっとする時間だった

焚き火を囲みながら夕食をとる。なんだかほっとする時間だった

Day1〜2のハイライトと改善点

<ハイライト>

  • 透き通った湖面がダイヤモンドのように輝いていたマクレオドレイク
    ザクザクとした砂地のトレイルを歩き始めてすぐ、木々の隙間からコバルトブルーの湖が見えてきた!
    真っ青な空から注ぐ太陽の光が湖面をキラキラと照らし、針葉樹林の深緑と山のグレー、空と湖のバランスが素晴らしく、早くもJMTに来て良かったと思える瞬間となった。

  • ロザリーレイクでのワイルドキャンプ
    ひっそりとしたロザリーレイクでJMTで最初のワイルドキャンプ。僕らだけのキャンプ地を見つけ、焚き火を囲みながらゆっくりと夕食をとる。暖かいコーヒーを飲みながら眺めた満天の星空はいつまでも忘れないだろう!

<改善点>

  • バスが無く人生初のヒッチハイクを強いられる
    ヨセミテバレーからマンモスレイクスまでのバスが無く急遽ヒッチハイク。8月までは毎日運行していたバスが9月からは週末のみの運行となっていた。季節の変わり目はタイムスケジュールの日付に要注意!

  • トレッキング前日キャンプサイトの空きが無く途方にくれる
    たまたまトレッキング前日がアメリカの連休と重なり、キャンプサイトはどこもいっぱいだった。ヨーロッパではスペースがあればほぼ張ることができたため、予約がなくても何とかなるかとは高をくくっていたが、アメリカでは張れる数が決まっていた。

三日目・四日目のトレッキングレポートはこちら

https://trailtravelers.net/john-muir-trail2/

準備アクセス等のまとめ記事はこちら

https://trailtravelers.net/john-muir-trail-summary/

世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら

https://trailtravelers.net/worldtravel-route/

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次