アイスランド・ロイガヴェーグル。火山灰や溶岩でできた灰色の大地からは蒸気が噴き出し、黄緑色の苔が生える。そして雪もある。そこは火山と氷河が織りなす太古の地球のような場所だった。雨に打たれ、火山灰にまみれながら歩いたあの景色は脳裏に焼きついて忘れることはないだろう。今回はこの55キロの絶景トレイルを4日間かけて歩いた。
本記事では、ロイガヴェーグルでのトレッキングのまとめとして、アクセス・準備、ルート、気候と装備、宿泊・食事、などについてレポートします。
(2016年8月時点の情報です)
ロイガヴェーグル Laugavegurとは
アイスランド南西部、ランドマンナロイガルLandmannalaugarからソルスモルクÞórsmörkまでの全長約55kmトレッキングルート。蒸気が吹き出す地熱エリア、溶岩や火山灰が堆積したエリア、氷河が削り出した渓谷などアイスランドのバラエティ豊かな景観が楽しめます。歩くことができるのは6月中旬から9月上旬のみです。
アクセスと準備
ロイガヴェーグルをトレッキングするにあたり許可証等の取得は必要ありません。
ロイガヴェーグルのスタート・ゴール地点となるランドマンナロイガルおよびソルスモルクはハイランドと呼ばれる内陸部の山岳地帯にあります。レイキャビクからハイランド走行用のバスが出ています。車高が高くタイヤのゴツいバスで、川をジャブジャブ渡り、デコボコの未舗装路に揺られるなかなか楽しいドライブです。夏の間のみ運行しています。
バス会社はトレックとレイキャビクエクスカーションズの2社あります。それぞれハイカーズバスパス、ハイランドパスポートという往復チケットがあり、往路、復路それぞれ一回ずつ、任意の日付、時間のバスに乗ることが出来ます。
特に予約がなくても乗車可能ですが、復路の最終便などは混雑することもあるようなので、早めに乗り場に行って待っておくほうが安心です。
チケットは乗車の際に直接、または事前にレイキャビクの街中(各社のオフィス、キャンプサイト等)で購入出来ます。チケットを持っている人が先に乗るよう誘導があったので、乗る予定がある場合はあらかじめチケットを買っておいた方がスムーズでしょう。
運行する2社の違いは主に、停留所と運行時刻です。登山口での乗り場は同じですが、レイキャビク市内や途中の街のどこに停まるかは会社によって異なるので、自分の宿泊先から便利な方を選ぶのが良いと思います。僕らは、宿泊していたレイキャビクのキャンプサイト前に停留するトレックのバスを利用しました(チケットも事前にレイキャビクキャンプサイトで購入)。またどちらも1日複数便ありますが、運行時刻は異なります。特に復路の最終便の時刻には注意しましょう。
往路をレイキャビク→ランドマンナロイガル、復路をソルスモルク→レイキャビクで利用する場合の各社概要をざっくりまとめておきます。時刻表などの最新の情報は各社サイトまたは現地で確認をお願いします。
トレック TREK
- 往路:レイキャビクキャンプサイト発 7:45 / 12:45
- 復路:ソルスモルクLangidalur発 14:30 / 18:00
- ソルスモルクはLangidalur、Bsaarの2か所に停車
- ウェブサイトはこちら
レイキャビクエクスカーションズ Reykjavik Excursions
- 往路:BSIバスターミナル発 8:00 / 13:00 / 16:00
- 復路:ソルスモルクLangidalur発 15:20 / 20:10
- ソルスモルクはHusadalur、Langidalur、Bsaarの3か所に停車
- ウェブサイトはこちら
トレッキングルート
ランドマンナロイガルからソルスモルクまでの約55キロを3泊4日で歩くルートがスタンダードです。どちらをスタートにしても歩くことが可能ですが、標高差の関係からランドマンナロイガルをスタートとした方が歩きやすいようです。
またソルスモルクからエイヤフィヤトラ氷河とミルダルス氷河の間を越えて、スコーガルまで歩くフィムヴォルズハウルスと呼ばれるルートも近年人気が高まっているようです。ランドマンナロイガルからスコーガルまでを5〜6日で歩くことができます。
途中、テント泊の場合を含め、山小屋があるフラプティンヌスケル、アルフタヴァトンまたはハヴァンギル、エムストル/ボトナルが宿泊場所となりますが、ここから1〜2時間程度のサイドトリップルートがあるようなので、毎日到着後、余裕があれば(物足りなければ)歩いてみても良いでしょう。
日程が十分に確保できない場合は、ランドマンナロイガルやソルスモルクを拠点にした日帰りや1泊2日のトレッキングでも十分楽しめると思います。
その他、ハイランドエリアには数多くのトレッキングルートがあります。前述したバスを利用する場合、ランドマンナロイガル、ソルスモルク、スコーガルのいずれかがスタート・ゴール地点となりますが、未舗装路も走行できる四駆のレンタカーを利用してこれら以外の場所でトレッキングすることも可能です。
ルート地図、行程表は、ロイガヴェーグルウルトラマラソンのサイトが分かりやすかったです。
僕らが歩いた日程・ルート
- 初日 ランドマンナロイガル 〜 フラプティンヌスケル (約12km)
- 二日目 フラプティンヌスケル 〜 アルフタヴァトン 〜 ハヴァンギル (約17km)
- 三日目 ハヴァンギル 〜 エムストル/ボトナル (約10km)
- 四日目 エムストル/ボトナル 〜 ソルスモルク (約15km)
二日目はアルフタヴァトン泊が一般的のようです。この場合二日目は約12km、三日目は約15kmの行程になります。
トレッキングレポートはこちら
https://trailtravelers.net/iceland-laugavegur1/
https://trailtravelers.net/iceland-laugavegur2/
https://trailtravelers.net/iceland-laugavegur3/
https://trailtravelers.net/iceland-laugavegur4/
気候と装備
アイスランドの天候はかなり不安定です。僕らがトレッキングした4日間は、初日晴れ、二日目雨、三日目天気雨、四日目晴れ時々雨といった感じでした。ガイドブックや他の人のブログの写真を見ても、どんよりとした天気の写真が多く、雨が多いことを裏付けています。気温は低く、冷たい雨が降ります。しっかりとしたレインウェアは当然として、手袋に関しても防水性のある冬用の厚手のものが良いでしょう。
僕らが歩いた8月は残雪もだいぶ少なくなっていましたが、7月は残雪が多いようです。
夜は冷え込むため、テント泊の場合は寒さ対策が必要です。僕らはテント・シュラフともスリーシーズン(春夏秋)用のものだったため、レイキャビクの登山用品のレンタルショップで、フリースのブランケットをレンタルしました。フリースやダウンを着込み、シュラフにフリースブランケットをかけ、その上にエマージェンシーシートをかけて、なんとかなった感じです。このレンタルショップでは冬用シュラフなどもレンタル可能です。僕らは持って行きませんでしたが、カイロなどがあると良かったかなと思います。
エマージェンシーシートはこちらの二人用のものを使用。結露しますが、保温力は高いです。
渡渉があるため、サンダルは必須で、安全に渡るためにもトレッキングポールもあった方が良いでしょう。
僕らが歩いた時期は、蚊などの虫はほとんどいませんでした。
僕らの海外トレッキング&世界一周の装備・持ち物のまとめ記事はこちら
https://trailtravelers.net/world-travel-item/
食事と宿泊
ロイガヴェーグルの小屋とテント場
ロイガヴェーグルのルート上には山小屋(ハット)があります。料金は7,500ISK(約6,375円)。事前にメールで予約が可能です。当日直接行っても定員以上は原則受け入れないようです。素泊まりのため、小屋泊であっても各自で日数分の食料を持参する必要があります。売店などもありません。小屋にはガスキッチンが併設されています。詳細はこちら。
テント泊の場合は、山小屋周辺の決められた場所のみテントを張ることが認められています。テント泊の料金は一人1,800ISK(約1,530円)。こちらは事前予約は必要ないようです。
アルフタヴァトン、ハヴァンギル、エムストルの小屋にはシャワーがあり、別料金500ISK(約425円)で利用可能です。
トレッキング前後の宿泊
トレッキングの前後は、レイキャビクやその周辺の街に宿泊することになると思います。高級ホテルから安宿までいろいろありますが、キャンプサイトもおすすめです。夜は少し冷えますが、ロイガーベーグルでトレッキングする装備があれば対応可能です。
僕らはレイキャビク市内にある、レイキャビクキャンプサイトという所に宿泊しました。かなり広いサイトで予約なしでもキャンプ可能です。キッチン等の設備も広くたくさんの利用者で賑わっていました。アクセスの項でも述べましたが、トレックのハイランドバスの発着場所がすぐ目の前なので便利でした。ゴミの削減を熱心に推進していて、あらゆる不要なものをフリー食材、フリー備品としてみんなでシェアするコーナーがあります。利用者の大半がトレッカーのようで、トレッキングで余った食材・燃料などが日々大量にシェアされていました。
レイキャビクキャンプサイト
- テント場利用料一人一泊1,900ISK(約1,615円)。クレジットカード可
- Wi-Fiは宿泊料金に込み。レセプションやキッチンダイニングのある棟周辺のみで繋がる
- 充電は無料(ダイニングや洗面所などのコンセントを使用可)
- トイレ、ホットシャワー(温泉水)、洗い場などあり。石鹸なし
- 備え付けのドライヤーは一応壁にあるがかなりパワー弱い
- 洗濯機あり(有料)
- 荷物預かりあり(有料)
- レセプションでトレックのバスチケットを購入可能
- ガス缶、アルコール燃料、地図などの販売あり(フリーコーナーにも使い残りのガス缶や燃料が大量にある)
- ウェブサイトはこちら
参考にしたサイト
The Icelandic Touring Association
ロイガヴェーグルの概要、山小屋に関する情報(宿泊人数、費用、設備、等)はThe Icelandic Touring Associationが運営するこちらのサイトで確認することができます。山小屋の予約もこちらにメールで行うことで可能です。
トレック TREK
アイスランドでのトレッキングツアーの情報がまとまっています。ツアーで歩く場合はもちろん、個人で歩く場合でもロイガヴェーグルを歩く場合もこのサイトの行程表などが参考になります。ロイガヴェーグル以外のトレッキングも紹介されているので、もっと歩きたい場合は参考になると思います。
ウェブサイトはこちら
レイキャビクエクスカーションズ Reykjavik Excursions
トレック社と同様に、アイスランドでの様々なツアーを催行している会社です。トレッキング以外のツアーが中心です。ケフィラヴィーク空港のアクセスバスも運営しています。
ウェブサイトはこちら
まとめ
毎日がスゴい!の連続で、地球のエネルギーを感じるトレイル。日本の緑豊かな山歩きとは全く別のアドベンチャー。雨に打たれ、冷たい渡渉もあり、火山灰にまみれて、辛い思いもしたけれど、こんな絶景は他では絶対に味わえない。
ロイガヴェーグルは秘境感たっぷりながら、トレイルは明瞭で危険な箇所は無く、歩いている人もそこそこいて、山小屋もあるので、しっかりとした装備で臨めば誰でも楽しく歩けるトレイルです。
アイスランドはトレッキング以外の観光スポットもたくさんあるので、旅行と組み合わせてトレイルを楽しめる素晴らしい場所の一つなので、興味のある方は是非チャレンジしてみてください!僕らはトレッキング終了後、レンタカーでアイスランドを一周しました。
アイスランド一周の最中に訪れたキルキュフェットルのトレッキング記事はこちら
https://trailtravelers.net/iceland-kirkjufell/
個人的には、レイキャビックキャンプサイトの、トレッカーで溢れかえる雰囲気が好きで、楽しい思い出になっています。
最後に、実際にロイガヴェーグルに行ってわかったことをまとめました。
https://trailtravelers.net/laugavegur-tips/
世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら
https://trailtravelers.net/worldtravel-route/
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