マオリ族の聖地 ニュージーランド トンガリロノーザンサーキット(3)

ニュージーランド北島トンガリロ国立公園。トンガリロ、ナウルホエ、ルアペフという3つの活火山を擁し、溶岩流の塊、クレーター、エメラルドグリーンの湖など、現実離れした世界が広がる場所。ニュージーランドの先住民マオリ族の聖地でもある。この場所には、トンガリロノーザンサーキットと呼ばれるトレッキングコースがあり、僕らは三泊四日でトレッキングを行った。

三日目、四日目のトレッキングレポートです。

(トレッキング実施日:2017年1月18日、19日)

目次

Day3 概要

  • スタート地点 オトゥレレハット
  • ゴール地点 ワイホホヌハット
  • 9時45分出発 12時35分到着(休憩込み) 
  • 行動時間 2時間35分(休憩除く)
  • 距離 7.5km

下り坂の天気を心配しながら出発

山小屋の中で寝ていても風の音で目が覚めるほど外は強い風が吹いていた。

今日はワイホホヌハットで再びテント泊の予定。僕らはテント泊をベースに時折山小屋泊を組み合わせてトレッキングを行っている。テントのプライベート空間が好きなことと、費用面の節約を考えてのことだが、雨や気温などコンディションは厳しいこともある。そんな状況もこれまでの長旅の経験で慣れていたつもりだけど、山小屋の快適さを味わってしまうと、テント泊に戻るのが億劫になってしまう。これから天気は下り坂だという。外で吹き荒れる冷たい風を感じながら、今日のテント泊を思うと少し憂鬱な気分になった。

ワイホホヌハットまでの距離は7.5kmとかなり近い。ゆっくりと準備をして、出発。昨日まで綺麗に見えていたマウント・ナウルホエは、山の向こうから湧き出す大量の雲に覆われ、全容がつかめない。

今日のマウント・ナウルホエは雲がかかり、全容をつかむことができない

今日はマウント・ルアペフに向かって進んでいく

今日も溶岩と砂のトレイル

横風を受けながら進む

溶岩のトレイルから徐々に砂のトレイルへ。今日はマウント・ルアペフを正面に見ながら進んでいく。マウント・ナウルホエの姿も美しかったが、ルアペフも独特の力強さを感じる姿で美しい。雪の付き方が火山特有のもので、アイスランドの火山帯を思いだす。

風を遮るものがないため、横風を全身に受けながら進んでいく。空は少しずつ薄い雲が広がり、くすんだ色に変わっていった。

途中、樹林帯を通り抜ける。初日に少しだけ森の中を通ったが、それ以外は荒涼とした風景が続いたトンガリロノーザンサーキット。久々の樹林帯だ。

横風が強い。天気は下り坂のようだ

空の色も徐々にくすんだ色に

この森の中を抜けていく。森らしい森はトンガリロで初めてだ

ワイホホヌハットからその先

ひんやりとした森を抜けると本日の目的地ワイホホヌハットが見えた。ハットの手前で再び樹林帯を通り、ワイホホヌハットに到着。

僕らより先に出発したハイカーの多くがいない。残っていたハイカーに話を聞くと、明日は天候が悪化するため、今日のうちに先に進んだ人が多いとのこと。

天気が悪化することを踏まえると、今日ここワイホホヌハットでテント泊をすることは避けたい。暴風雨でのテントは想像しただけで悪夢。代案として、今日はワイホホヌハットでの山小屋泊へ変更し、明日暴風雨の中歩く案(先に進んだハイカーがいるため山小屋に空きが出る見込み)。もう一案として、本日中に先に進み、ゴールのファカパパビレッジまで歩く案。ワーデンも「俺なら今日中に進むね」という意見だった。ただし僕らの場合、ファカパパに着いてもホテルではなくキャンプのため、結局暴風雨の中でのテント泊となる可能性がある。

悩みに悩んだ結果、ワイホホヌハットでの山小屋泊を選択。今日の夜は暖かい山小屋の中で過ごしたかった。明日の天気は心配だが、問題は先送り。ワイホホヌハットはこれまでの山小屋の中でもっとも新しく、綺麗で快適な小屋だった。

ひんやりとした樹林帯。木の幹に何種類もの苔類が着生していた

森を抜けるとワイホホヌハットが見えてきた

ワイホホヌハットは新しく、広くて綺麗で快適だった

Day4 概要

  • スタート地点 ワイホホヌハット
  • ゴール地点 ファカパパビレッジ
  • 10時20分出発 15時20分到着(休憩込み) 
  • 行動時間 4時間50分(休憩除く)
  • 距離 14.3km

予報通りの悪天候

予報通り天気は崩れ、暴風雨となった。気温も低い。夕方には回復する見込みとの予報ではあるが、外の様子を見ながら、出発のタイミングを見計らった。

10時過ぎ、少し雨が弱まったように思えたタイミングで出発したものの、全くそんなことは無かった。この旅最大の暴風雨が僕らを襲う。歩けないほどではないが、風が前後左右から吹き付ける。危険な箇所は無いのが唯一の救い。修行に耐え、黙々と進むのみ。

ちなみにこの日、僕らが二日目に歩いたレッドクレーター付近は、風速時速100kmの予報。風速を”秒速”ではなく”時速”で表す予報のため、瞬時にどれくらいの強さかイメージが付かないが、高速道路を走る車の窓から顔を出すような状況。気温もマイナス6度の予報だった。おそらくトレイルはクローズとなり、歩くことができないだろう。

天気予報の通り、外は暴風雨

横殴りの雨を浴びながら草原を進む

大量の雨に打たれながら歩き続ける

予想以上の雨量に、ザックカバーには水がたまり、レインウェアのポケットも浸水。落ち着いて休憩を取れないことを想定し、ポケットにトルティーヤやお菓子を入れてきたが、それもびしょ濡れだ。

そして、大量の雨によって川が増水しトレイルが水没している箇所も。やむなく渡渉かという状況だったが、なんとか岩の上を通って渡りきることができた。

写真ではなかなか伝わらないが、この旅一番の暴風雨トレッキングになった

途中、川が増水し、トレイルが水没している場所も

無事ファカパパへ

今日のルートは、晴れていれば右手にマウント・ナウルホエ、左手にマウント・ルアペフを眺めながら歩くことができるのだが、何も見えない。途中、タマ・レイクと呼ばれる美しい湖へのサイドトリップルートもあるのだが、もちろんパス。休憩も取らずに黙々と歩いた。

3、4時間歩き続けた頃、ようやく雨が上がり、青空が見え始めた。周りの草花も激しい雨を凌いで、どこかホッとした表情に見えた。

タラナキフォールズまで来ると、ファカパパビレッジからのデイハイカーを見かけるようになる。ゴールは近い。

スタートから5時間弱でファカパパビレッジに到着。ファカパパホリデーパークのキャンプ場にテントを張り、暖かいシャワーを浴びる。ゆっくりと晩御飯を作り、厳しいコンディションの中、無事に歩ききったことを祝った。

日差しが出ると、目の前に広がる景色は一気に明るくなる

たくさんの白い花が咲き誇る

タラナキフォールズの上部から

周回ルートの出発地でもあり到着地でもあるファカパパビレッジへ

雪化粧をした山々

翌朝、マウント・ナウルホエも、マウント・ルアペフも、山の中腹まで白く雪を被っていた。マオリ族の聖地トンガリロ国立公園は、火の山であり、雪の山でもある、美しくも厳しい場所だった。

前日の雪で中腹まで白くなったマウント・ナウルホエ

マウント・ルアペフも真っ白に

ハイライトと改善点

<ハイライト>

  • マウント・ルアペフの堂々とした姿
    なだらかな山なのに力強さを覚えるマウント・ルアペフ。それは溶岩が流れ出た跡に沿って雪が残るという、火山特有の姿から来るものかもしれない。
    隆起してできた山や、氷河活動によって削られた山とはまた違う、堂々とした姿だった!

<改善点>

  • 荒天予報時の判断
    「俺なら先に進むね」それがワーデンの意見だった。トレッキング中のコンディションだけを考えればその通りで、実際ものすごい暴風雨で歩くのは大変だった。一方、この日の宿泊場所・形態(山小屋・テント)を考慮すると判断が分かれるところ。僕らは暴風雨のテント泊を避けて、山小屋に留まった。
    今回の判断は間違ってはいなかったと思うが、今後も天気予報やワーデンの意見をしっかり確認して、安全なトレッキングを行っていきたい。

  • 暴風雨の中で歩く時の濡れ対策
    凄まじい雨と風にさらされること数時間。これまで世界の山の厳しいコンディションから僕らを守ってきてくれたお気に入りのレインウェアもザックカバーも、想定を上回る激しさに、もはや万事休すという状況。
    荷物をいったんゴミ袋に全部入れてからザックにしまう等の対策をしておけばよかったが、気づいたときには遅かった。寝袋が濡れてしまったのは不覚。ファカパパヴィレッジに乾燥室があったことがせめてもの救いだ。

 

初日、二日目のトレッキングレポートはこちら

https://trailtravelers.net/newzealand-tongariro1/

https://trailtravelers.net/newzealand-tongariro2/

ルート、アクセス、気候や装備、食事と宿泊等のトレッキングまとめ記事と、トンガリロに実際に行ってわかったことをまとめた記事はこちら

https://trailtravelers.net/newzealand-tongariro-summary/

https://trailtravelers.net/newzealand-tongariro-tips/

世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら

https://trailtravelers.net/worldtravel-route/

 

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次