ジョンミューアトレイルを歩いた僕らは再び大西洋を渡り、ヨーロッパの地に戻って来た。強い日差しにのんびりとした雰囲気、干し鱈の香りが印象的な南欧ポルトガル。トレッキングコース選びに苦労したが、雰囲気の良い二つのトレイルを巡ることができた。
一つ目は、ポルトガル中部、コインブラの街からバスで1時間ほどの郊外にあるロウザン・シスト・トレイルを歩いた。
(トレッキング実施日:2016年9月20日)
概要
- スタート地点 ロウザン城 Castelo Lousa
- ゴール地点 カサル・ノボ Casal Novo、タラスナル Talasnalを経由し、ロウザン城へ
- 11時30分出発 14時00分到着
- 行動時間 約2時間30分(休憩込み)
- 距離 約6km
- ロウザンのバス停からロウザン城までは片道徒歩45分(タクシーなら10分程度)。上記行動時間・距離には含まず
ヨーロッパ再訪
ポルトガルで最初に訪れたのは中世から残る美しい街並みが残るポルト。アズレージョと呼ばれる装飾タイルが教会やアパートの外壁、駅構内の内装、住所を示す表札まで、街の至る所を彩っていた。僕らは街の中心部からは少し離れた広い庭のある静かな宿に滞在していた。スーパーへ行くと干し鱈の香りが漂う。ポルトガルは海鮮の国だ。匂いにつられ干し鱈やムール貝を買って帰り、安い白ワインを飲みながら料理をし、ゆったりと過ごす。ここ2か月間のロングトレイル疲れを癒すには丁度良い場所だった。

アズレージョと呼ばれるタイルで彩られた街。ポルトの旧市街は世界遺産でもある

ドン・ルイス1世橋。川沿いにはおしゃれなカフェ・レストランやポートワインのワイナリーが並ぶ
トレッキングの舞台
ポルトガルは温暖な自然環境を生かし、いくつもの遊歩道が整備されているようなのだが、情報は少なく、トレッキングコース選びには少し苦労した。そんな中僕らが向かったのはポルトガル中部にあるロウザン。
ロウザンの町はずれは山となっており、そこには11世紀頃の古城とかつては一度放棄された石造りの集落がある。その後徐々に修繕がなされ、その森の中に佇む美しい景観からちょっとした観光スポットとなっている。ここが今回のトレッキングの舞台だ。
ポルトを後にした僕らは、コインブラに向かった。伝統の黒いマントを羽織った学生たちが行き交う、ポルトガル最古でヨーロッパ屈指の伝統を持つ名門コインブラ大学がある町だ。大学の建造物群が世界遺産に指定されている。
ロウザンはコインブラからさらにバスで1時間ほど。トレッキング前日は、コインブラに宿泊した。

ヨーロッパ屈指の伝統を誇るコインブラ大学
森の中の古城
ロウザンは郊外の街という雰囲気で、少し歩くと石畳の寂れた雰囲気の古い街並みとなる。9月のポルトガルは暑く、少し歩いただけで額から汗がこぼれ落ちる。
15分ほどでロウザンの街を抜け、豊かな森に囲まれた緩やかな登り坂をさらに30分ほど歩く。森の中から赤茶色の古城が見えてくる。ロウザン城だ。11世紀頃に建造された城だという。ここまでは車でもアクセス可能のためタクシーを利用しても良いだろう。

バスを降りてからこのようなロウザンの古い街並みを抜けていく

街並みを抜けると山に向かう緩やかな登り坂となる

やがて森の隙間から中世の砦といった雰囲気のロウザン城が見えてくる
小さな教会の裏手
ロウザン城の側に周辺のトレッキングルートの案内があった。僕らは、カサル・ノボとタラスナルという石造りの集落を巡るPR2 LSA “Lousa Schist Trail 2″という周回コースを歩く。ロウザン城から6キロ、3時間ほどで歩けるとのこと。Schist(シスト)とは、片岩(熱や圧力などによって鉱物種の構成や外見が変化した岩石で面状構造を持つ)のことを指し、この辺りの建造物の材料として使われている。
まずは少し下って石造りの橋が架かった小川を渡り、そのすぐそばに立つ洒落たレストランの脇を登っていく。その先に山の中にひっそりと佇む小さな教会があり、その裏手から山道に入っていく。

ロウザン城から少し下って、小川を渡ると白い壁が印象的なレストランがあった

登山口は教会の裏手にある
石造りの集落
ここから最初の目的地カサル・ノボまではかなりの急登。眺望のない鬱蒼とした山道をびっしょり汗をかきながら登る。真夏に登る日本の低山を思い出す。もう少し秋めいた季節になれば、涼しくて紅葉も楽しめるのだろう。
ロウザン城からカサル・ノボへは40分ほどで到着。視界が開け、遠くロウザンの街まで見渡すことができる。時折吹き抜ける風が気持ち良かった。カサル・ノボはレンガのような石を積み上げて作られた石造りの家が並ぶ。この石材がSchist(シスト:片岩)で、集落はSchist Villegeとも呼ばれる。廃墟となっているものもあるが、綺麗に修繕され、住居や宿泊施設となっているものもあるようだった。

しばらくはこのような眺望のない樹林帯を進む。蒸し暑く日本の真夏の低山のようだった

カサル・ノボの集落。このような石造りの家が数軒並ぶ。この石材がSchist(シスト:片岩)

カサル・ノボからはロウザンの街を見下ろすことができる
ひっそりと並ぶ赤茶色の家々
遠くの景色を眺めながらランチ休憩を済ませ、次の目的地タラスナルへ向かう。カサル・ノボまで一気に登ったため、タラスナルまでは緩やかな下り坂。落ち葉が敷き詰められた甲府の武田の杜のような雰囲気のトレイルを進んで行く。
30分ほどでタラスナルに到着。カサル・ノボよりも少しだけ大きな集落で、石造りの建物はより手入れがなされ、山に沿って迷路のように入り組む路地が印象的だった。
集落を少し歩いて周ると、観光案内所、小さな教会、宿泊施設やカフェ・レストランがあり、別のルートから車でアクセスすることもできるようだった。ミニバスで訪れた6、7名ほどの観光客がパラソルのあるオープンテラスで楽しそうにランチを取っていた。

カサル・ノボからタラスナルへ向かうトレイルから、タラスナルの集落が見える

タラスナルの集落。広場があり、象徴的な1本の栗の木が立っていた

壁に小さなマリア像が納められていたり

綺麗に手入れされた石造りの集落。ひっそりとした路地で一匹の猫が出迎えてくれた
雲ひとつない青空のもと下山
ゆっくりと時間が流れるこの場所で少しの休憩を挟み、遠くに見えるロウザン城に向けて下山開始。雲ひとつない青空から注ぐ強い日差し、山の中にある石造りの集落、山の斜面に森を切り開いて作られた段々畑。「どことなくネパールの山村みたいだね」などと僕らは話しながら下りていく。
廃墟になったエリアを抜け、九十九折の山道を下り、小川を越えて未舗装を進むと、スタート地点のロウザン城へ戻ることができた。
予定のバスに乗車し、コインブラまで戻った僕らは、そこから電車に乗り継いで、ポルトガルの首都リスボンへ向かった。

廃墟になった住居の脇を下山していく。遠くには山を切り開いて作った段々畑

再びロウザン城が近くに見えてくるとゴールはもうすぐだ
歩き終えて
ここ2ヶ月ほどはロングトレイル続きで、様々なトレイルを楽しみながらも、どこかにずっと緊張感があったのも事実。
ロウザンは、深い森に佇む古城と石造りの集落が、時の流れを忘れさせてくれた。少しのんびりしたいという僕らの今の気分にぴったりのトレイルだった。
決して華やかでは無いが、こういう静かな山歩きも良いなと感じた1日だった。
ハイライトと改善点
<ハイライト>
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森の隙間から顔を出したタラスナルの集落
カサルノボからタラスナルへ向かう途中、森の隙間から石造りのタラスナル集落が見えた瞬間。森の中に静かにひっそりと並ぶ赤茶色の家々は、心に安らぎを与えてくれる、どこか懐かしい田舎を感じさせるものだった
<改善点>
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移動手段の確認の徹底
コインブラからロウザンに移動するバスのチケットは、バス車内では購入できず、コインブラの駅の窓口で買う必要があった。車内で購入できると思い込んでいたが、購入できず、1本バスを乗り過ごしてしまった・・・
ルート、アクセス、装備、食事等のまとめ記事はこちら
https://trailtravelers.net/portugal-lousa-summary/
世界のトレイルを巡る旅の全体概要はこちら
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