世界遺産マロティ・ドラケンスバーグ公園。南アフリカとレソトの国境沿いにあり、名前の由来の通りドラゴンが出てきそうな秘境。3000m級の山々が連なり、絶壁と渓谷が美しい景観を織りなしている場所だ。ここにはジャイアンツカップトレイルというトレッキングコースがあり、僕らは5日間かけて歩いた。
本記事ではトレッキング初日・二日目のレポートをお伝えします。
(トレッキング実施日:2016年10月23日、24日)
Day1 概要 サニロッジ〜フォレラ小屋
- スタート地点 サニロッジ Sani Lodge Backpackers
- ゴール地点 フォレラ小屋 Pholela Hut
- 9時00分出発 15時10分到着
- 行動時間 6時間10分(休憩込み)
- 距離 約15キロ
南部アフリカの秘境
「キャッキャーキャキャッ」
遠くで動物同士が争うような激しい鳴き声が聞こえてきた。ここドラケンスバーグ山脈は南アフリカ共和国とレソト王国の国境沿いに伸びる断崖と峡谷の秘境。3,000m級の断崖からいくつもの峡谷と尾根が交互に続くダイナミックな景観は、まさしく「ドラケンスバーグ(竜の山々)」。
ケープタウンを後にした僕らは、ドラケンスバーグ山脈にある全長約60kmのトレッキングコース「ジャイアンツカップトレイル Giant’s Cup Trail」を歩きに来たのだ。

正面に広がるのがドラケンスバーグ山脈。今回のトレッキングの舞台だ
トレッキングのスタート
ジャイアンツカップトレイルのスタート地点は、南アフリカ共和国からレソト王国との国境サニパスに向かって伸びる道路沿いにある。この辺りは広大な丘陵に農場や牧場が広がるのどかな場所で、遠くに連なるドラケンスバーグ山脈を眺めることができる。前日はサニロッジバックパッカーズという宿に宿泊した。ちなみにこの宿はしぼりたての牛乳がフリー!
初日はサニロッジからフォレラ小屋Pholela Hutまでの約15キロを歩く。
オフィシャルなスタート地点はサニロッジから8キロ離れた場所となるため、僕らはより近いGxalingenwa Vallyを経由するルートからスタートした。このルートはサニロッジから2.5キロ舗装路を進んだところが登山口となるが、目立った案内板は見つけられなかった。Gxalingenwa Vallyにかかる橋が目印だ。

トレッキング前日にサニロッジバックパッカーズ近くの丘の上から撮影。翌日、写真中央に見える谷沿いを左方向に奥へ奥へ入っていくことになる

トレイルの入り口は左手の看板の奥に見える森のあたり
ひっそりとした渓谷を進む
しばらくはGxalingenwa Vally沿いを進んでいく。途中、この先に進むにはパーミットが必要という看板がある。この辺りを歩くためにはパーミットが必要となり、事前にEzemvelo KZN Wildlifeというところで取得する必要がある。ジャイアンツカップトレイルを歩く場合、ハット(山小屋)の予約&支払をすれば、パーミットを合わせて取得できる。
ジョンミューアトレイル以来、一ヶ月ぶりのオーバーナイトトレッキングで荷物が重くペースが上がらない。気温は涼しくコンディションとしては悪く無いはずなのだが、身体が重い。1ヶ月ほど過ごしたポルトガル、スペイン、モロッコで美味しいご飯を食べ過ぎたか、笑。

しばらくは渓谷に沿って緩やかに登っていく
洞窟を抜け高台のトレイルへ
やがてトレイルはジャイアンツカップの本流に合流。ここからは斜面を緩やかに登っていく。洞窟のような場所を抜け高台まで登りきると、これまで歩いてきたGxalingenwa Vallyを見下ろすことができる眺望ポイントだ。今日は厚い雲が垂れ込め遠くの景色は望めないが、ようやくジャイアンツカップを歩き始めたという実感が湧いてきた。
ここから先は徐々に標高を上げていくため、完全にガスの中に入ってしまった。
動物の激しい鳴き声が聞こえたのはこの辺りだった。

川を渡り、左方向に斜面を登っていく

歩いて渓谷を見下ろす。徐々にガスに包まれていく
バブーンが現れた
この辺りの山は大きな木が少なく山肌は草で覆われている。緩やかなアップダウンの草原トレイルを進んでいくと猿の集団に遭遇。バブーンと呼ばれるヒヒだ。
15匹から20匹くらいの群れで、背中に赤ちゃんを乗せているものもいる。甲高い奇声を発し、僕らの侵入を仲間に知らせているようだった。それでも呑気に毛繕いをしているものもいて、微笑ましかった。

バブーンの集団に遭遇!

その後はすっかり雲の中。晴れの日はどんな景色が広がるのだろうか
無人の小屋へ
やがてトレイルは谷沿いを少しずつ下っていくようになり、雲の中を抜け、視界が広がってくる。遠くに建物とテントが見えてくる。今日の目的地フォレラ小屋Pholela Hutだ。
今回のトレッキングは全て、山小屋泊。山小屋といってもバンクベッド、トイレ、シャワー、キッチンスペースがあるだけの無人の小屋。外見は綺麗な建物だったが、中に入ると殺伐とした雰囲気。ベッド数は30ほどあるが、僕ら以外に宿泊するトレッカーもいない。閑散とした小屋の中はなんとなくどこか不気味に感じられ、「大変なとこに来ちゃったね〜」と笑うしかなかった。その夜はなんとかその静けさから逃れようと、スマホから音楽を流して過ごした。

緩やかに谷沿いを下っていく

フォレラ小屋。外見は綺麗な建物

中は殺風景で慣れるまでは怖かった、笑
Day2 概要 フォレラ小屋〜ムジムクルワナ小屋
- スタート地点 フォレラ小屋 Pholela Hut
- ゴール地点 ムジムクルワナ小屋 Mzimkuluwana Hut
- 8時15分出発 12時20分到着
- 行動時間 4時間5分(休憩込み)
- 距離 約9キロ
- 上記とは別に片道約1時間半(約3キロ)のサイドトリップ
雲ひとつない快晴
今日は雲ひとつない快晴。朝の柔らかな日差しが水滴を含んだ芝生を照らし輝いていた。
今日の行程はムジムクルワナ小屋Mzimkuluwana Hutまでの約9キロと短いため、小屋に着いてから荷物を置いてサイドトリップする予定だ。
しばらくは山と山の間に広がる草原トレイルを進み、その後は緩やかに山肌を登っていく。
ジャイアンツカップトレイルは、右手に3000m級のドラケンスバーグ山脈を眺めながら歩けるようにルートが設定されている。そのため、ドラケンスバーグ山脈からの支脈とその間に広がる谷をいくつも越えていくようなコースだ。

今日は気持ち良い快晴。スタート地点にはSecond Dayの案内も(左側の石)

草原の道を緩やかに登っていく
パノラマトレイル
今日は暑さもあって昨日以上にペースが上がらない。標高1600m〜2000m付近を歩くのだが日差しを遮るものがない。暑さに苦しみ、緩やかな登り坂を何度も立ち止まりながら進む。
支脈を登りきると右手にドラケンスバーグ山脈のパノラマが広がる。ホジソンズピークも綺麗に見える。
しばらくパノラマトレイルを楽しむとやがて遠くに今日の目的地ムジムクルワナ小屋Mzimkulwana Hutが見えてきた。この時は谷から広がる草原に立つ可愛らしい小屋に見えた。

日差しを遮るものがなく、暑さとの戦いとなった

右側がホジソンズピーク・ノース、左側がヒジソンズピーク・サウス
難易度の高い小屋
草原を横切り、手前の小川を越え、小屋に到着。小部屋が5つ横に並ぶ細長い小屋。真ん中にキッチンスペースがあるのだが、他のトレッカーが残していった食料やゴミがそのままになっている。
5つある部屋を開けてみると、バンクベッドが並ぶだけのまた殺風景なもの。ベッドはあるものの、マットは無い。寝袋は持参しているが、マットは持ってきていなかったため、板の上に寝袋を敷いて寝ることになった。
そしてここは電気はなくシャワーも冷たい水のみ。今日も他にトレッカーはおらず、山小屋の管理人もいない。遠くにはバブーンの声。これまでにも過酷な状況を乗り越えてきた僕らだが、さすがに気が滅入ってしまった…苦笑。ジャイアンツカップトレイルには山小屋があると聞いて、どんなところか少し楽しみにしていたのだが、ちょっと期待しすぎていたようだ。

写真左中央の土色の建物がムジムクルワナ小屋
荷物を置いてサイドトリップへ
時間はまだ13時前。マッシュポテトにシリアルを加えたランチを食べ、気を取り直してサイドトリップに出かけることに。
できるだけ眺望の良いポイントを目指し、小屋から渓谷沿いに伸びるトレイルを登っていく。
途中までしっかりとした踏み跡があるが、登るにつれ不明瞭となり、やがてトレイルが分からなくなった。しかし、地図上は谷沿いに進むことが明確なこと、高い樹木もなく遠くまで視界が確保できていることから、そのまま登り続けることにした。

小屋に荷物を置いてサイドトリップへ

途中から踏み跡を見失ったが、地図に従い谷を登る
どこまでも続くドラケンスバーグの景色
サイドトリップスタートから1時間半ほどで見晴らしのよい高台に到達。登ってきた谷を挟んで正面にはドラケンスバーグ山脈が右から左まで連なる絶景が広がる!!
どこまでも続く南部アフリカの手付かずの大自然。今日も誰一人、他のトレッカーとすれ違わず、僕らだけがこの大自然の中にポツンといる。遠くにバブーンの鳴き声が聞こえる。そんなシチュエーションに1時間ほどどっぷり浸っていた。
山小屋に戻り、夕食を食べ、日没とともに板だけのベッドの上で就寝。今日も山小屋は僕らだけの貸切だった。

目の前に広がるドラケンスバーグ山脈

遠くまで広がる大自然をいつまでも眺めていた
Day1〜2のハイライトと改善点
<ハイライト>
-
バブーンの群れやエランドとの遭遇
遠くから聞こえて来る鳴き声、霧の中から現れたバブーンの集団、遠くの丘の上からこちらをずっと眺めているエランドなど、これまで歩いてきたトレイルとは異なる動物たちにアフリカの秘境にいることを実感!! - サイドトリップで登った丘の上からの絶景
二日目、小屋に荷物を置いて出かけたサイドトリップ。途中から踏み跡がわからなくなり少し不安だったが、頑張って登った丘の上からはドラケンスバーグ山脈の大パノラマ!!
アフリカのスケール感を全身に感じた瞬間だった。
<改善点>
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山小屋の様子のリサーチ不足
二日目の小屋は、ベッドのみでマットレスが無く、板の上に寝袋を敷いて寝る羽目になった。電気も無く、夜は真っ暗。事前に様子を調べて、スリーピングマットやロウソクを持参すればもう少し快適になったかもしない。
三日目〜五日目のトレッキングレポートはこちら
https://trailtravelers.net/south-africa-giants-cup-trail2/
コメント
コメント一覧 (2件)
初めまして!
マロティ=ドラケンスバーグ公園の情報を知りたくて検索したところ
こちらの記事にたどり着きました。
ルートや宿泊施設など細かい点まで記載されており、非常に助かりました。
また、他の地域のトレッキングもとても魅力的で行きたいところが増えました!
写真撮影から記事作成まで丁寧にありがとうございました。
p.s.
実は私も2016年7月頃、クロアチアのプリトヴィツェ国立公園を訪れていたので
もしかしたらお二人とすれ違っていたかも…!!と胸が躍りました!
T.Hironoさま
コメントいただきましてありがとうございます。また返信が大変遅れてしまいすみません。
ドラケンスバーグの情報が誰かの役に立つだなんて、驚きとともにたいへん嬉しく思います。
プリトヴィツェを歩かれたりと色々と歩かれているのですね!