オーストラリア・タスマニア島、世界自然遺産に指定されているタスマニア原生地の最深部を歩く65kmのトレッキングルート・オーバーランドトラック。ボタングラスの草原にユーカリの木々、ゴンドワナ時代からの太古の森、そしてウォンバットやワラビーなどの野生動物、ここは毎日が見知らぬ動植物との出会いの連続。僕らはこの大自然でこの旅最後となる五泊六日のトレッキングを行った。
初日のトレッキングレポートです。
(トレッキング実施日:2017年1月25日)
Day1 概要
- スタート地点 ロニークリーク Ronny Creek
- 途中、クレイドルマウンテンへサイドトリップ
- ゴール地点 ウォーターフォールバレー Waterfall Valley
- 12時30分出発 19時50分到着(休憩込み)
- 行動時間 6時間40分(休憩除く)
- 距離 10.7km(+サイドトリップ2km)
最後のトレッキングの始まり
いよいよ300日間の旅を締めくくる最後のトレッキングがやってきた。僕らが最後のトレッキング地として選んだのはオーストラリア・タスマニア島にあるオーバーランドトラック。タスマニア原生地の最深部、クレイドルマウンテン国立公園からレイクセントクレア国立公園をつなぐ65kmのトレッキングコースだ。途中に補給地点はなく、六日間の食料とテントを自ら背負って歩くという、これまでの集大成と言えるトレッキング。
早朝、ロンセストンの街を出発し、正午前にクレイドルマウンテン国立公園へ。ビジターセンターでオーバーランドトラック・パスを受け取る。オーバーランドトラックを歩けるのは一日60人(内、個人ウォークは34人)の制限があり、パーミット制となっている。そこからシャトルバスに乗車し、オーバーランドトラックのスタート地点であるロニークリークへ移動した。
スタート地点で記念撮影をするのもこれが最後かと思うと少し寂しい気持ちになる。六日分の食料を詰め込んだバックパックがずっしりと肩にのしかかる。でもその重さが心地よかった。300日間背負い続けた相棒は、いつしか僕らの体の一部となり、未知の世界に挑む不安を和らげる心の支えにもなっていた。
初日から開放感溢れる稜線歩き
初日は、ロニークリークからウォーターフォールバレーまでの約10キロの行程。ひっそりとした小さな森を抜け、クレーター湖の側を登っていくと、すぐに森林限界を越えたような見通しの良い風景となる。まるで日本の山の稜線歩きのような開放感に笑顔がこぼれ落ちる。
マリオンズ展望台からの眺め
小高い丘の上にあるマリオンズ展望台からは、眼下に穏やかなダブ湖、遠くには荒々しいクレイドルマウンテンが見渡せる。澄んだ空気が心地よくて深呼吸。初日から申し分のない景色が僕らを迎えてくれた。
この辺りはクレイドルマウンテン国立公園内の日帰りトレッキングルートでもあり、日帰りハイカーの姿も。
雲ノ平のような心踊るトレイル
ここから、クレイドルマウンテンを正面にして、北アルプス・雲ノ平のような雰囲気のトレイルを歩いていく。まだ初日ということもあって気分的に雲ノ平ほどの秘境感は感じられないが、目の前に広がる爽快な景色に胸が高鳴った。
夢のようなトレイルを歩いて、クレイドルマウンテンの手前にあるキッチンハット(宿泊はできない避難小屋)に着いた頃、時計は15時半を回っていた。クレイドルマウンテンへのサイドトリップは往復2〜3時間、ここから本日の目的地ウォーターフォールバレーへは2時間程度。時間的にはギリギリだが、クレイドルマウンテンへ行けるところまで登ってみることに。
クレイドルマウンテンの頂上へ
クレイドルマウンテン山頂への道は、これまでの歩きやすいトレイルとは異なり、途中から大きな輝緑岩の塊を手も使いながら這うように登る必要があった。振り返るとかなりの高度感に鼓動が高まる。時間を気にしつつ、慎重に一つ一つ岩をよじ登り、頂上へ。
山頂からタスマニアの原風景を見渡す
遥か遠くまで広がる大自然。どこを見渡しても人工的なものは一つもない。遥か昔、ゴンドワナ大陸から切り離され、氷河活動よって削られた山と大地が広がる、タスマニアの原風景がそこにあった。
このあたりの風景の特徴は、なだらかな大地からぽっこりと飛び出た険しい岩山があること。氷河期、この辺り一帯は氷河に覆われていたのだが、氷河に覆われなかった山の上部だけは削られずに残り、ゴツゴツとした岩山の原型を留めているのだという。クレイドルマウンテンもそうだし、この先に見える突起物のような山、バーンブラフもそうだ。
ウォーターフォールバレーへ
高度感にドキドキしながら慎重に下山。太陽が傾き始め、遠くからは厚い雲が迫ってきた。キッチンハットにデポしておいた荷物を背負い、本日の目的地ウォーターフォール・バレーを目指す。
ローソクの灯火で晩御飯
キッチンハットからウォーターフォールバレーまでは割と距離があった。どんどん雲が広がり、ポツリポツリと雨が落ちてくるようになる。バレーという名の通り、最後は一気に下って、目的地に到着。
到着が19時50分ということもあって、僕らはほぼ最後のメンバー。発行されているパーミットの数に対して、小屋のベッド数は少ないため、すでに空きは無いだろうと思っていたが、僅かながらスペースが残っていた(小屋に空きが無ければテント泊となる。もちろん好んでテント泊を選ぶ人も多い)。天気が下り坂の中、小屋に滑り込めて一安心の僕らだった。
寝床をセットしてから晩御飯の支度。食べ始める頃には薄暗くなり、ローソクを灯してのディナーとなった。
ハイライトと改善点
<ハイライト>
- マリオンズ展望台からキッチンハットまでの爽快なトレイル
キッチンハット手前のクレイドルマウンテンを正面にして歩くトレイルの雰囲気は、北アルプス・雲ノ平のようで、目の前に広がる爽快な景色に胸が高鳴った
初日から絶景トレイルを楽しむことができ、早速オーバーランドトラックの魅力にとりつかれてしまった! - クレイドルマウンテン山頂からの眺め
アスレチック感満点の岩登りをして辿り着いたクレイドルマウンテンの山頂
どこまでもタスマニアの原風景が広がる眺めに、これから始まる六日間のジャーニーへのワクワク感が止まらなかった!
<改善点>
- できれば朝からの出発にしたかった
バスの運行日程と取得したパーミットのトレッキング開始日の関係から、僕らはトレッキング開始日の午前中にバスで移動し、午後から歩き始めた。そのためクレイドルマウンテン山頂へのサイドトリップのための時間的余裕が少なかった
前日入りして、翌朝から歩きはじる日程だと、時間に余裕を持って行動できたと思う
二日目、三日目、四日目、五日目・六日目のトレッキングレポートはこちら
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack2/
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack3/
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack4/
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack5/
オーバーランドトランクへのアクセス・宿泊、気候・装備についてはこちら
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack-summary/
オーバーランドトラックに実際に行ってわかったことについてはこちら
https://trailtravelers.net/australia-overlandtrack-tips/
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