レソト王国。四方を南アフリカ共和国に囲まれた珍しい国で、ほとんどが山と丘からなる山岳王国だ。全土の標高が1,500m以上にあり、そのロケーションから天空の王国と称される。南アフリカとレソトの国境サニパスを訪れた僕らは、ジャイアンツカップトレイルから毎日眺めていたドラケンスバーグ山脈の断崖の上を、日帰りトレッキングで楽しんだ。
(トレッキング実施日:2016年10月29日)
概要
- スタート地点 サニトップバックパッカーズ Sani Top Backpackers
- ゴール地点 ホジソンズピークの手前 Hodgeson’s Peak
- 9時15分出発 11時15分到着 13時00分帰着(休憩込み)
- 行動時間 3時間15分(休憩除く)
- 距離 約2km
アフリカ旅で楽しみにしていた場所
ジャイアンツカップトレイルを歩ききった僕らは、翌日レソト王国へ向かった。ジャイアンツカップトレイルを歩きながら毎日眺めていた断崖絶壁の向こう側にある国だ。2,800mを超える断崖絶壁の向こう側は、そのまま高地が続いており、レソトは天空の王国と称される。
今回僕らが越える南アフリカとレソトとの国境サニパスからの眺めは、まさに天空から世界を見下ろしたような景色が広がる場所で、アフリカの旅で楽しみにしていた場所の一つだ。
デコボコ道を乗り合いバスで
レソト・サニパスへは乗り合いバスで向かう。バスが何時に出るか決まっていないため、朝早く宿を出発し、バス停と言われた場所でヒッチハイクを試みつつ、バスが来るのを待つ。結局3時間ほど待ってアンダーバーグ方面からの乗客が集まり、満車となってバスが出発。乗り合いバスと言っても車両はハイエース。年季の入った車だが、なぜか天井にはパイオニア製の立派なスピーカーがいくつも取り付けられていた。
乗客はレソトに帰るレソトの人たちで、両手に持ちきれないほどの荷物とともに乗り込んできた。そのため車内は身動きが全く取れない寿司詰め状態。
南アフリカ側のボーダー手前から未舗装路となり、サニパスがある2,873mまで崖に沿って造られたデコボコ道を、ハイエースで登っていく。南アフリカボーダーを越えた途端に、車内にレソトミュージックがガンガンに流れ始める。乗客はみんなノリノリだ。僕らは膝の上に積んだパンパンのザックが悪路の衝撃で飛んでいかないように必死でつかみながら、約2時間上下左右の揺れと大音量の音楽と巻き上がる砂埃に耐え、やっとのことでレソト側のボーダーに到着した。
そこは、南アフリカ側の青々した草原丘陵とは異なり、荒野が広がる場所だった。石造りの円形の家に、毛布をまとったレソトの人々が生活し、羊たちがわずかに生えた草をむさぼっていた。この日はここにある宿サニトップバックパッカーズに宿泊した。
断崖から伸びる力強い支脈
翌日、僕らはトレッキングに出かけた。サニパスからのトレッキングは、南部アフリカ最高峰3,482mのタバナントレニャ山や、南アフリカとの国境沿いの断崖に立つホジソンズピーク3,251mが一般的。僕らは、ジャイアンツカップトレイルから眺めていたホジソンズピークを目指して歩くことにした。この辺りは明確なトレイル(踏み跡)が無いため、不安な人は、ガイドを雇ったり、ホーストレッキングを行うことをお勧めする。
レソト側のボーダーの裏手から、断崖に沿って南東方面に歩いていく。天気は良いがとにかく風が強い。レソト側から南アフリカ側に風が吹き下ろしており、油断すると飛ばされてしまいそうだ。断崖からはうねうねと波打つように、いくつもの支脈が伸びるのが見渡せる。その力強さと迫力は、以前に訪れたハワイ・カウアイ島のナパリコーストの景色に似ていた。
何もない荒野
断崖沿いの道は途中で途切れてしまったため、一旦少し内陸部に入り、うっすらとついた踏み跡に沿って進んで行く。どこを見渡しても何もない標高3,000m近いレソトの荒野が広がる。この日は快晴で、遠くまで視界が確保できていたが、天候の悪く視界が無い日は迷う可能性があるため、注意が必要だろう。
やがて踏み跡はわからなくなり、正面に見える小高いピークを目指して歩く。やや急な斜面を登りきると、再び断崖絶壁の上に立った。しかし風が強く、立っているのが精一杯。できればホジソンズピークまで行きたかったが、これ以上進むのは危険と思われたため、ここで引き返すことにした。
眼下に広がる辺境の景色
ここからの眺めも素晴らしかった。強い風によって雲がどんどん流されていく。大きな雲が眼下に広がる山々にたくさんの光と影を作りし、不規則に形を変えながら滑り降りるように山肌を流れていく。僕らは断崖に腰をかけ、持ってきたサンドウィッチを食べ、しばらくの間、アフリカの辺境の地を脳裏に焼き付けてから、帰途についた。
帰りは終始緩やかな下り。風にあおられながらも、無事に宿に戻ることができた。しばらくすると外は土砂降りの雨となった。
歩き終えて
ジャイアンツカップトレイルで毎日歩きながら眺めていたドラケンスバーグ山脈。「あの先はどうなっているのだろう」「あそこからの眺めはどのようなものだろう」と楽しみにしていた場所を歩くことができた。
どこまでも荒涼な風景が広がる場所のため、正直なところ単調なトレッキングではあるが、ドラケンスバーグ山脈の断崖から見下ろす景色は、これまでの旅では見たことのない迫力があり、息を飲む素晴らしさだった。
レソトは天空の王国と聞いて、是非行ってみたいと思っていた国。ここまで来るのが大変だったこともあり、断崖の上に立った瞬間は感慨深いものがあった。
この翌日、僕らの300日間の世界のトレイルを巡る旅は、200日目を迎えた。
ハイライトと改善点
<ハイライト>
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眼下に広がる断崖風景とすごいスピードで流れていく雲の影
風が強くて歩くのが大変だったが、その強い風によって雲が形を変えながら流れ、雲が作り出した影も一緒になって山肌をスルスルと流れていく、その光景は圧巻だった!
あの風景は今も脳裏に焼き付いて離れない・・・
<改善点>
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ガイドの手配やホーストレッキングの選択も!?
トレイルが不明瞭でわかりづらく、風が強いこともあって、ホジソンズピークまで歩くことを断念したが、ガイドの手配やホーストレッキングを選択していれば、より安全に目的地までたどり着くことができたかもしれない
レソト・サニパスのトレッキングまとめ記事はこちら
https://trailtravelers.net/lesotho-sanipass-summary/
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