マチュピチュ・ワイナピチュを歩いた僕らは、嵐の大地とも呼ばれる南米大陸南端の地パタゴニアへ。まずはアルゼンチン側のロス・グラシアレス国立公園を訪れた。美しい南極ブナの森、難攻不落の尖塔セロトーレ、クライマー憧れの山フィッツロイを巡る二泊三日のトレッキングを行った。
本記事では、ロス・グラシアレス国立公園、セロトーレ、フィッツロイでのトレッキングのまとめとして、ルート、準備とアクセス、気候と装備、食事と宿泊などについてまとめました。
(2016年12月時点の情報です)
フィッツロイ・セロトーレとは
南アメリカ南部、パタゴニア地方のフィッツロイ山群にある2つの名峰、フィッツロイとセロトーレ。世界自然遺産に指定されているロス・グラシアレス国立公園内にあります。氷河に削られたと言われる鋭く切り立った岩山が連なる景観は独特。フィッツロイを望むロストレス湖、およびセロトーレを望むトーレ湖までは、アルゼンチンのエルチャルテン(チャルテン村)から、南極ブナが気持ちいいトレイルが整備されています。僕らは二泊三日で歩きました。

パタゴニア独特の植生を楽しめるトレイル
トレッキングルート
アルゼンチンのエルチャルテンを起点に、トレッキングコースが整備されています。フィッツロイを望むロストレス湖まではエルチャルテンから片道4〜5時間程度、セロトーレを望むトーレ湖まではエルチャルテンから片道3〜4時間程度。フィッツロイの展望地に行く方は標高差がある一方、セロトーレの展望地の方はほぼ平坦です。それぞれエルチャルテンから日帰りで訪れることができますが、展望地近くのキャンプ場に泊まり、一泊二日や二泊三日で周辺を巡るトレッキングも可能。ロストレス湖からトーレ湖までは片道5時間程度。それ以外にもピエドラスブランカス氷河へのトレッキングコース等もあります。
セロトーレとフィッツロイを巡る二泊三日のトレッキングレポートはこち
https://trailtravelers.net/patagonia-fizroy1/
https://trailtravelers.net/patagonia-fizroy2/
https://trailtravelers.net/patagonia-fizroy3/
行ってわかったフィッツロイ・セロトーレ その1
フィッツロイ、セロトーレの岩山を眺めるだけでなく、そこにいくまでの森歩きや湖畔歩きもパタゴニアならではの楽しいトレッキングです。特にフィッツロイのロストレス湖とセロトーレのトーレ湖をつなぐルートは、南極ブナの森や湖沿いのトレイルがとても気持ちよかったです。フィッツロイだけでなくセロトーレも合わせて楽しむなら、キャンプ泊をしながらゆっくり森歩きも楽しむのがおすすめです。
一泊二日でも十分歩けますが、天気が悪ければキャンプ場で一泊停滞でき、天気が良ければ朝焼けのフィッツロイ、セロトーレをそれぞれ拝むチャンスがあるということで、僕らは二泊三日で歩きました。
キャンプ泊や、朝焼けのフィッツロイ・セロトーレに拘らないのであれば、チャルテンからの日帰りトレッキングでも十分楽しめます。ロストレス湖またはトーレ湖までの往復となるため1日の行動時間は長くなりますが、キャンプ道具を持参しない分、軽快に歩けるでしょう。キャンプ泊よりも日帰りトレッキングをしている人の方が多いように感じました。

フィッツロイのロストレス湖とセロトーレのトーレ湖をつなぐルートもおすすめ
アクセスと準備
アルゼンチンのエルカラファテという街を経由して、エルチャルテンという小さな村が拠点になります。
フィッツロイ、セロトーレ周辺をトレッキングするのに許可証等は必要ありません。
エルカラファテからエルチャルテンへの行き方
エルチャルテンへは、エルカラファテという街からバスでアクセスできます。所要約3時間程度。複数のバス会社が運行しているので、エルカラファテのバスターミナルに行き、希望の曜日・時間・料金のバスを予約して購入します。または街中にある旅行会社でも手配可能です。シーズン中は1日3便運行されています(カラファテ発8時、13時、18時。チャルテン発7時半、13時、18時。 ※chalten travelの場合)。
僕らはカラファテ発13時のバスで移動し、その日はチャルテンの宿に一泊し、翌日トレッキングを開始しましたが、カラファテ発朝8時のバスを利用すれば、11時頃にチャルテンに到着するため、その日のうちに歩き始めることができます。この辺りは天候が不安定のため、余裕を持った日程計画をおすすめしますが、日程に余裕がない場合はチャルテン到着日に歩き始めることもできます。
アルゼンチン側のパタゴニア観光ではペリトモレノ氷河もハイライトのひとつですが、氷河トレッキングなどのペリトモレノ氷河観光と一緒にエルチャルテンへのバスチケットを旅行会社で手配すると、安くなる場合があります。
往復のチケットの場合、復路の日時を指定する必要がありますが、空席があれば復路当日でも日時変更可能でした。
アルゼンチンの長距離バスは、バスターミナルの使用税としてバス料金とは別でお金がかかります。
エルカラファテへの行き方
ブエノスアイレスからエルカラファテへの行き方
エルカラファテへは、僕らはアルゼンチンの首都ブエノスアイレスから飛行機で行きました。カラファテ空港とエルカラファテの町は少し離れており、シャトルバスで移動することになります。僕らは予め宿泊する宿にシャトルバスの手配を依頼しておきました。
ブエノスアイレスから長距離バスを乗り継いでいくこともできるようです(直線距離で約2,000kmほどなので時間はかかります)。
プエルトナタレスからエルカラファテへの行き方
パイネ国立公園などチリ側のパタゴニアと合わせて訪れる場合、チリのプエルトナタレスとアルゼンチンのエルカラファテ間を移動することになります。プエルトナタレスとエルカラファテ間は複数のバス会社が運行しています。それぞれの街のバスターミナルに行き、希望の曜日・時間・料金のバスを予約して購入します。所要5時間15分ほど。
僕らは、フィッツロイ・セロトーレやペリトモレノ氷河等のアルゼンチン側のパタゴニアを先に訪れた後、エルカラファテからプエルトナタレスに移動しました。陸路でアルゼンチン・チリの国境を越えます。僕らの乗ったバスは二階建てでトイレ付。休憩はないので飲み物やちょっとした食べ物はあらかじめ買っておいた方がいいでしょう。ただしチリ入国の際、動植物の持ち込みは厳しく制限されています。お菓子は大丈夫ですが果物等はNGです。自炊やトレッキングのための食糧等を持ち運ぶ場合も、持込禁止に該当しないかご注意ください。

エルカラファテのバスターミナル。複数のバス会社の窓口がありました
気候と装備
フィッツロイは、現地の言葉で「煙の吐く山」の意味を持つほど、常に雲がかかっている山です。この地域は晴天日が少なく天気は変わりやすいです。夏でも気温が低く、雪が降ることもあります。僕らが訪れた朝方のトーレ湖は氷が張っていました。雨対策、寒さ対策は夏でもしっかりと行う必要があります。
朝焼けのフィッツロイやセロトーレを見るために、ロストレス湖やトーレ湖に長時間滞在する場合は、それなりの寒さ対策が必要です。多くの人は、厚手の寝袋を持参し、中に入ってその時を待っていました。僕らも、ダウン、レインウェアの上に、フリースブランケットを羽織って寒さ対策を行いました。手袋や毛糸の帽子、ネックウォーマーなども必須でしょう。
晴れた日は紫外線がかなり強いとのことで、日焼け対策もしっかり行いましょう。

美しい朝焼けのセロトーレやフィッツロイを見るためにはしっかりとした防寒対策が必要
この辺りの水はそのままでも飲めるようですが、氷河から流れ出た水は細かい泥の粒子が混ざっているため、僕らは浄水していました。浄水フィルターはソーヤーミニを持って行きました。
テントや寝袋、ガスバーナーなどはチャルテン村のアウトドアショップでレンタルできます。3件ほどレンタルショップがありました。値段や在庫状況に違いがあるため、複数件見て回ると良いでしょう。僕らがレンタルした2人用のテントは、サイズが大きく重量もありました(3キロくらい?)。日本や欧米で流通している大手アウトドアブランドのテントと比較すると重かったです。火器は、ガス燃料のものしか認められていないようです。ネイチャーストーブやアルコールストーブは禁止されているので注意しましょう。
僕らの海外トレッキング&世界一周の装備・持ち物のまとめ記事はこちら
https://trailtravelers.net/world-travel-item/

テントのレンタルをしたエルチャルテンのアウトドアショップ
食事と宿泊
トレッキングルート上に売店はありません。必要な食糧はエルカラファテやエルチャルテンで調達しましょう。エルチャルテンにも小さいですがスーパーがありますが、品ぞろえ、価格はエルカラファテの方が優位です。どちらの街も観光客向けのレストランはいくつもあります。
宿泊は、山小屋はありませんが、キャンプ場がいくつか整備されています。予約不要で無料で利用できます。簡易トイレが設置された広場という感じで、水は川から汲みます。
トレッキング前後はエルチャルテンやエルカラファテに宿泊することになりますが、ホテルからゲストハウスまでいくつもあります。
僕らがエルチャルテンで宿泊したのはPioneros del Valle Hostel。キッチンやコモンスペースが広々としていて、清潔感がありました。エルチャルテンのその他の宿泊施設検索はこちら。
また僕らがエルカラファテで宿泊したのはBla Guest HouseとNakel Yenu hostel。どちらも温かみがあるインテリアで居心地がよく、清潔感もありました。どちらも朝食付きですが、Bla Guest Houseは品数が多く、フルーツもたくさんあってとても美味しかったです。エルカラファテのその他の宿泊施設検索はこちら。

エルカラファテのブラゲストハウス
行ってわかったフィッツロイ・セロトーレ その2
パタゴニア地方は天気の変化が激しいです。トレイルが晴れていてもフィッツロイやセロトーレが雲に隠れていることもしばしば。余裕を持った旅行計画をおすすめします。トレイル上のキャンプ場は予約不要。天候は朝は雨でも午後から回復することもあります。宿泊していたゲストハウスでは僕らも含めて、チェックアウト時間ぎりぎりまで待って、今日トレッキングに行くか宿を延泊するかを決める、というハイカーが何人かいました。パタゴニアは緯度が高く、トレッキングシーズンである夏場は遅くまで日が出ているので、コースによっては昼からのスタートも可能です。
行ってわかったフィッツロイ・セロトーレ その3
アルゼンチンやブラジルでメジャーなお茶といえばマテ茶。スーパーにはマテ茶の葉がたくさん並んでいます。トレッキング中は、ザックのサイドポケットに、マテ茶を飲む専用の容器とお湯を入れたタンブラーを入れて歩いているハイカーを見かけました。マテ茶を飲むための容器は街中のお土産屋にたくさん売っています。夏でも朝晩は冷え込むので、温かいマテ茶がいつでも飲めると元気がでそうです。
主な費用
(参考) 1ARS(アルゼンチンペソ)=約7.21円 ※2016年12月レート
- カラファテ空港からエルカラファテの宿までのシャトルバス 一人150ARS
- エルカラファテからエルチャルテンまでのバス(片道) 一人350ARS
- バスターミナル使用税(1回) 一人20ARS
- テント・ガスストーブレンタル(二泊三日) 540ARS
- ガス缶 150ARS
行ってわかったフィッツロイ・セロトーレ その4
アルゼンチンはインフレが激しいため、ほとんどのものの値段は事前に調べていた金額より高くなっていました。2016年10月のインフレ率(ブエノスアイレス市発表)は、前年同月比44.7%の上昇、前月比2.9%の上昇。現地通貨ベースでどれくらいの金額が必要かを見積もる際は、物価が上昇していることを十分加味し、米ドルの現金を多めに持って行きましょう。
ATMでキャッシングする場合、1回あたりの手数料が比較的高いため、こまめにキャッシングするのではなく、必要な金額をまとめて行うのが良いです。銀行によって1回あたりにキャッシングできる最大金額が異なるので、たくさん引き出せるATMでおろしましょう。
参考にした書籍
パタゴニアに魅せられて移住した写真家の紀行文。パイネ国立公園やフィッツロイだけではない、パタゴニアの魅力が綴られています。これを読むともっと様々なパタゴニアに行きたくなりました。気分を盛り上げてくれる一冊。Kindle版があるので荷物にならず重宝しました。
まとめ
フィッツロイ・セロトーレ展望トレッキングは、アルゼンチン側パタゴニア観光のハイライトのひとつ。パタゴニア地域を訪れる際は是非訪れたい場所のひとつでしょう。ただし、このあたりは天気が変わりやすく、厳しいコンディションになりがちです。雲のかからないフィッツロイを目指すのであれば、日程に余裕を持たせて、何度かチャレンジする覚悟が必要かもしれません。
一方、日程が十分に取れない場合は、チャルテン村からフィッツロイの展望地であるロストレス湖までの日帰りトレッキングでも十分楽しむことができます。予定や天候に合わせて、トレッキング日数・ルートを柔軟に組むことができるのも、フィッツロイ・セロトーレ展望トレッキングの特徴の一つです。
また、パイネ国立公園で有名なチリ側のパタゴニアもセットで訪れたいですね。チリ・パタゴニアのパイネ国立公園のトレッキング記事はこちら
https://trailtravelers.net/patagonia-torres-del-paine-summary/

歩くのが楽しいトレイルでした
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